小説
□冬の屋上
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*相変わらず帝様がツンドラ。
笑う、といっても色んな笑い方があり、それによって人の印象というものはかなり変わるものだ。
張り付けたように笑うにしろ、嘲り笑うにしろ、朗らかに笑うにしろ。
実に細やかなものである。
感心さえしてしまうほど。
帝人はそんな馬鹿なことをぼんやり考えていた。
そんなことを考えるために大して時間のない休憩時間に、立ち入り禁止の屋上へと足を運んでいるのだ。
無駄のように感じるし、実際の所無駄なのだろうが、帝人にとっては大切な時間で、きっちりした中でのちょっとした息抜きというやつである。
最初は僅かながら禁止されているという抵抗感があったものの、慣れればなんてことない只の日常と化した。
ふとその時、屋上に突き刺すような風が吹き荒れた。
「寒っ…やっぱり冬は止めといた方がいいかな…」
それは屋上に来る前から危惧していたことであったが、やはり寒い。
十一月ならまだ大丈夫かと思ったのだが…。
はぁ、と吐いた息が白い。
「…今日はもう戻ろう」
あまり換気されてないからか妙に暖かい教室が恋しくなってきた。
「あれ、もう帰るの?帝人」
…いつの間に。
背筋に冷たい汗が流れたのは気のせいではないだろう。
体温が奪われるから止めてほしい。
「いつからいたんですか、臨也さん」
「んー?…最初から」
「え、本当ですか…気が付かなかったんですけど」
帝人の返しが面白かったのか、それとも他に何か面白いことでもあったのか、肩を震わせ笑う臨也。
その笑い方を見て帝人は、
やっぱり笑い方って色々あるんだなぁ、と少し前に考えていたことを思い起こしていた。
「というか、今日もサボりですか?」
「うーん、まぁそんなとこかな」
どうせ屋上から人間観察でもしてたんだろうな、と帝人は臨也の手にある望遠鏡を眺めながら思っていた。