主×陽介

□出会い
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鳴上悠視点です。








ここに来て最初にすごいと思ったのは、なにもない事だった。
昔俺が居た場所では前を見て空は見えなかった…
灰色の建物や人混みに溢れかえって居た場所は本当に日本だったのか?
もしくはコッチが外国ではないかとくらい思えてしまう。


家では菜々子が朝食を作っている所だ。

「あ、おはよう」

菜々子はトーストを皿に丁寧に載せ俺が座る席に静かにおいた。

「おはよう、いつも1人で?」

「うん、いつもそうだよ。お父さんは朝早くから仕事だって…夜も遅くなるからって。」

菜々子は何処か寂しそうだ…
こんな幼い子が家に帰って一人。
きっと堂島も心配だろう。

「手伝うよ。」

菜々子は顔を赤くした…

「えっ?いいの?」









今日は始めての登校だ、菜々子は自分が曲がる所より少し先まで俺を連れて来てくれた。

「ここ、まっすぐ行けば着くから。」

今日は雨だ、菜々子は傘を傾け俺に笑顔を見せた。
俺はわずかに緊張していたが、菜々子の笑顔が緊張をそっとほどく…

「ん…わかった、ありがとう。」

「菜々子はあっちだから。」









学校に着き職員室に向かった。
校長から担任を教えてもらった…
諸岡と言うらしい。
なんとも憎めない感じの人だ…
脇に抱えているノートを見ると、腐ったミカン帳と書かれている。
一体なにが書かれているのだろうか?

教室に連れていかれると、皆俺を好奇心の目で見ていた。

諸岡は俺に自己紹介をさせるのではなく、へんぴでただれたなど勝手に言い付け成れの果てには、落ち武者などと言い出した。

「誰が落ち武者だ。」

つい口が先走ってしまった…

勇気が上がった気がした。

「なんだ?その目は、何か文句でもありそうだな?ん…?貴様は腐ったミカン帳に書いていておくからな。」

さっきまで何が書かれているのか気になっていたノートに自らが記されてしまった。

諸岡はまだ何か言っている…

すると、空いている席の隣に座っている淡い茶毛のショートカットの女子が声を張った。

「はーい、先生ぇ転校生くんの席あたしの隣でいぃーですよねー?」

「お、あぁ…そうだな。」

まるでマジックが起こったように諸岡は黙った。

ショートカットの女子は里中千枝と言うらしい。
里中の前の席には天城雪子が座っていた…
黒髪美少女と言った所だろうか。

話していると、目を輝かせた?
男子がやってきた…

「俺花村陽介、もしかして都会から来たの?実はさぁ俺もだったりするんだょね。」

「はいはい、分かったから花村アンタテンション上がりすぎ…学校いく途中に自転車で転んだくせに調子乗りすぎ。」

「うっ…(しかも股間打ったなんて言えねぇ…)」








花村はしかも里中の成龍伝説のDVDまで壊したらしい…吹っ飛ばされて股間を机の角に打っている。
かなりの衝撃だろう。

「むぐぐぐ…」

「花村…大丈夫か?」

まだ股間に手を当てている。

「う…大丈夫ではないケド、って優しいのな。」

花村は目を輝かせている。
捨てられた犬の様だ…

「本当はそっとしておこうと思ったけど。」

それでは何も変わらないのだ。

「本音?今のまさか本音なの?」

「そーいえば、商店街で花村の名前出てた。最近この村にデパートが出たとか、それって何処?」

「あぁ、悪口聞いたんだ。」

「は?」

花村は浮かない顔をしている…
何かあるのだろうか。

「いやぁ、俺そのスーパーの店長の息子なんだわぁ…人気だから、商店街に人が少なくなってってそれで。」

「でも、聞いてないよ悪口。」

「…行く?ビフテキあるぜ。」

「行くよ。」
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