短編(本)

□構ってちゃんと不器用少年
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時計の針が6時を回った頃

私はとある愛しい人のもとへ少しでも速く着けるようにと全力で走る


………部屋の中を。



ダダダダダダ!!

バンッ!!

そして、リビングへの扉を勢い良く開けて叫ぶ



「一方通行ーー!!」

「………あァ?」



寝起きだったらしい彼は、あきらかに不機嫌そうな顔をしてこちらに顔だけ向けた

打ち止め達は買い物に行っていていない!!

つまりつまり

私は今一方通行と絶賛二人きりたーいむなのです!! ←



「うひゃぁー!!相変わらず涼しいですね!リビングは!まったく私の部屋にもクーラーを着けて欲しいものですよ!まったくまったく」

「………なァに居候のくせして贅沢言ってンだよ」



私の突拍子もない文句に軽くいつもどうりの返事をしてから、読んでいた新聞紙に再び視線を戻す彼


うー…なんだよー…

私より新聞紙の方が大切なんですかー!

…まぁ、私は別に彼の恋人って訳じゃないんだけど、でも新聞紙に負けるって言うのは絶対やだ!!

仮に打ち止めに負けるならまだしも…

とにかく、彼のもっと近くに行きたいと思った私は考えるより先にまず行動!ということでソファーに座っている彼の隣にダイブした



「どーん!!一方通行さんあーそびーましょ!」

「俺は今忙しいンだよ」

「えー…だって一方通行、つまんなそうに新聞なんか読んじゃって…全然忙しそうに見えませんよー!」

「お子ちゃまには理解できねェんだろォなァ」

「ム…ぅー…あそべー!!一方通行あそべー!!」



チッ…とめんどくさそうに私を赤い目でにらむ彼

彼が誰かを睨む時のその顔は…確かに怖くて、少し怖じ気づいてしまう時があるけれど

それでも、最終的にあなたは駄々を捏ねる私を見て仕方なさそうに新聞紙を折り畳み構ってくれる

ほら、今日だってそうだ

私はそんな彼の不器用な優しさが大好きで、思わず頬が緩んでしまう



「ンだァ?ニヤニヤして気色悪ィ」

「ひ、酷い!!気色悪いはさすがに酷いですよ一方通行!」



うっせェ
と私の頭を手の甲のゴツゴツした骨の部分でグリグリする



「い、いた…いたたた!」



でもやっぱり顔はにやけちゃってるまんまで



「これじゃァ打ち止めとどっちが年上なのかわかンねェな」



そう呆れたように呟く一方通行

嫌味を言われているっていう事は分かっているが、それ以前に今彼の頭の中に私がいるということがとても嬉しかった

そんな私はかなりの重症だろう



「酷いですぅ…そんなの、見たら一瞬で分かるじゃないですか!」

「悔しいンだったら少しは黙ってろ」

「う……」



そう言われると何も言い返すことができなくなる
でもそこで諦めたら女が廃るんだ!!
頑張れ!私!!



「でも!私は!一方通行ともっとお話したいんです!!」



だって大好きなんだもんっ



「…はァ…」



私のあからさまな告白に一方通行は「またかよ」と言わんばかりのため息をついた



「ちょ…そんな嫌そうな顔しなくたっていいじゃないですか!!」

「毎回毎回同じ事言われてるこっちの身にもなれ、だいたいよォ…」



そこまで言うと一方通行は乱暴に私の頭をかき乱すと…



「俺が嫌だったら、お前とっくの昔に病院送りになってンだろォが」



そう、小さな声でボソッと呟いた


「え?」

「……ンでもねェよ」



あまりに小さな声だったので思わず聞き返してしまったが、実ははっきりと聞こえていて



「………えへへ〜ありがとうです一方通行!」



嬉しさのあまり、彼の腰回りにおもいっきり抱きついた



「おま…なれなれしく抱きついてンじゃねェ!離れろ!!」

「嫌ですー!」

「………ハァ」



彼は素直じゃなくて、不器用だけど…
最近は少しずつ、心の内を見せてくれるようになった

そんな彼が、いつか私の前だけでもいいから、その殻を自ら剥がしてくれるような人になってくれたら

私の告白にも、今度こそちゃんと向き合ってくれるんじゃないかな

そう思えた、とある日の午後





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