LivE(本)

□第壱 落下
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風が私の耳もとで音をたてる中

私はゆっくりと目を瞑った




なんだ、飛び降り自殺は途中意識を失うから痛みを感じずにすむと聞いたけど…


意識、消えないじゃないか…




腹のなかをなんとも言えないくすぐったさに支配されたまま、空中浮遊を続ける私


全身で風を感じる…

どうせ私の人生はもう終わるんだ

最後ぐらい

この瞬間ぐらい、楽しんだっていいじゃないか


















そろそろ

私の体は地面と衝突するだろう

あいつら、私の死体を見たらどう思うかな…




喜ぶかな

悔やむかな

悲しむ…かな












――…

































ん?











………まだ私、空飛んでるの?


飛び降りてから結構秒数が経っている


そろそろ衝突してもいいのじゃないだろうか?


学校って、こんなに高かったっけ?




不思議に思い、瞑った目を開いてみる


と…






「……っ!?」


私が落下していた場所は

学校からいつの間にか空の上に変わっていた


「え…、ちょ…まっ…なんで…」

さすがにパニックになってしまう
こんな状況、今まで聞いたことも体験したこともなかった



そして驚いたことがもう一つ



私の隣には

もう一人

女の子が居たということ




「…………」


その子は瞳を閉じ、ただ眠っているだけのようだ

オレンジ色のふわふわとしている髪が風に揺れている

身には何故か病院の寝巻きを来ていて

とても、可愛らしい女の子だった










私はその子の手を引き、そっと抱き締めた

そして、落ちたとき自分がクッションになるよう、自分の上に彼女を乗せる体勢にする





これでいい




これで少なくとも、この子は助かるだろう


そもそも私は自殺をしようとしてた人間だ、いや、正確には自殺をした…人間かな


そんな私が生きるぐらいなら、この子が生きた方がいいに決まっている、決まっているんだ


それにもう、私自身生きていたくはないのだから…


自分に言い聞かせて私は深く息を吐いた


そして寝ている彼女の耳元で小さく呟いた











「君はちゃんと…生きるんだよ」







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