LivE(本)

□第弐 目覚め
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「ハルちゃん!一緒に遊ぼうよ!」

「ごめんね、おかあさんが早く帰って来いって…」

「えー…わかったぁ」










「また断られたー」

「だから言ったろー?あいつは遊びに誘っても無駄だって!」

「なんでいつも遊べないのかなぁ?」

「あいつはたぶんオレ達の事嫌いなんだ、だから遊ぶのが嫌なんだよ、もうあいつと関わるのやめよーぜ!!」

「そーだね!私達だけで遊ぼう遊ぼう!!」

「…………」














違う…


違うの…



わたし、本当は…君達と…



―――――

――――

―――












「………っ!!」



わけもわからず、汗だくの状態で目が覚めた。毎日の様に見ていた幼い頃、唯一わたしが家族以外と会話を交わした時の思い出。



(また、同じ夢)



深呼吸をして高まった心拍をなんとか落ち着かせようとする

このままにしておくと、自分が壊れてしまいそうで怖かったから



「ふぅ…」

「随分うなされていたね。君」

「うぎゃぁふっ!?」



突然。

本当に突然、男の人の声が聞こえた。

声の主を探して体を起き上がらせるとわたしが寝ていた布団のとなりに一人の男の人が笑顔で座っていて

その表情は笑っているはずなのに、不思議な違和感を覚える。



「(うぎゃぁふ?)やっと起きたんだね、すぐ起きると思ってたけど…まさか丸一日寝てたなんて」

「いち…にち?」

「まぁいいや、とりあえず土方さん起きたら連れてこいって言ってたし、一緒に来てもらうよ」



そう言って、彼は混乱しているわたしの両手首に縄を縛りわたしを立たせようとした



「ほら、早く立って」

「ま、待ってください!わたし、立てないんです!!」

「………は?」

「それに、て、点滴は!?酸素マスクは何処ですかっ!?あれをつけてないと、わたしきっとすぐ…!!」


死んでしまう―

この言葉を言う寸前で、わたしは口を閉じた





死ぬ?

ちょっと待って





わたしは少し前の記憶を無理矢理引っ張り出してみる。



わたしはたしか

お母さんと医師に見守られて

死んだはず…


走馬灯だって見たし、身体中から力が抜けていく感覚も味わった。

じゃあなぜ…



「わたしは、息をしてるの…?」

「………」



身体中が震える。自分の身に何がおきているのか、分からない…

ひとり震える自分の体を抱きながら頭を働かせる


そしてしばらく考えること2分

一つの考えが私の頭に浮かんだ











ここは天国









「そっか…ここ、天国なんですね、天使さん」

「………………え?」



なるほど、と自分に深く言い聞かせる



「そうですよね、わたしが生きている分けないんだ…ここは天国、だから酸素マスクをつけてなくても息ができる」

「ねぇ…」

「天国って、和風なんだぁ…死んだらこう…もっと、天国は雲の上だとか、天使さんは金髪の白い服を着た女の子だとか…イメージと違ったな」

「ちょっと」

「あ…お母さん大丈夫かな、わたしいなくなったから…一人になっちゃう…ねぇ天使さん、ここから人間界見渡すことって…っっ!?」


ビクッ―と体が飛び上がる

驚いた…いつの間にか自分の首もとに










刀を突きつけられていたから



「……………ぇ…?」

「あ、大人しくなった」



その人は、にっこりと口に弧を描いてわたしに語りかけた



「あのさぁ、天使だとか、天国だとか言ってるけどさぁ、あんまふざけるのやめてくれる?イライラするんだよね」

「……っ」





























知らない

生きてるなんて


分からない
















でも














もしかしたら…














そう思うのが嫌だったんだ



生きてることを、生きてることを認めてしまったら、わたしは、『自分』が本当に『自分』なのか


分からなくなってしまうと思ったから。



「それに」



わたしの首に人差し指をあてて、その人は言葉を続ける



「君に何があったのかは知らないけど、僕は生きていて、その僕が君という人物を見ることができ、触れることもできる……これって、十分君が生きているって事にならないのかな?」

「っ!!!」



冷たい目だった。


冷たい目だったけど

その言葉は

どこか暖かかった。



「……っぃ…生きてる?…………わたしは、自分の力…で…っ…息を…してる?」

「うん、僕が証人になってあげるよ」



その言葉を聞いた瞬間、わたしの瞳からは涙がこぼれ落ちた。



「……ぅっ……わ…たしはっ…いきてる…いきてるっ…い…きてっっ………ふっ……くぅっ…」















初めて会ったその人の前で


わたしは大泣きした





その人は


何も言わず、わたしが泣き止むのをただただ待っていてくれた


















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