LivE(本)
□第肆 本当ノ始まり
1ページ/3ページ
「行っちゃったよ…」
「行っちゃったね」
ハルが走り去っていった方向を見つめぽつりと呟くと、沖田さんもまたぽつりと返事を返してくれた。
「あいつ、怒っちまったかな・・・?」
しょんぼりとした表情で俺に話しかける平助という子
なんというか、犬みたい。←
「まぁあんだけ笑いとばしゃあ誰だって怒るだろうよ」
俺への質問にさっきまで黙っていた土方さんが口を開く
呆れたように彼を見つめている
たぶん、怒ってるんじゃない。
きっとさんざん笑われたから恥ずかしくなったのだろう
「まだ新選組の事をあいつに詳しく説明してないからな、うろちょろされたら困る。総司、連れ戻しに行ってこい」
「えぇ・・・なんで僕が、土方さん行けばいいじゃないですか。偉そうに人に命令しちゃってさ。」
「なっ!お前!」
反抗的な態度をとる沖田さんに土方さんはご立腹の様子。
回りの隊長たちは苦笑いを浮かべている
新選組というのは、思っていたより、案外明るい雰囲気だった。
もっと、みんなピリピリしてて暗いイメージがあったのに
「俺が行きます」
「斎藤・・・だがな」
「すぐ連れ戻してくるのでご安心を」
「…はぁ、任せた」
「御意」
そう言うと、斎藤と呼ばれたその人は、一度俺の前へ立ち
「斎藤一だ」
と自分の名前を告げてからこの部屋から素早く去ってった
斎藤一さん、いかにも賢そうな人だ
とりあえず、まずはこの場にいる隊士さんたちの名前を聞かなければ
詳しい話はそれからだ
「あの・・・名前、お一人ずつ伺ってもいいですか?」
*****
よし
とりあえず、組長と呼ばれるお偉いさん方の名前は覚えた
まずはじめに
一番と真ん中に座っているいかにもって感じの人が新選組局長の近藤勇さん
おおらかで優しそうな人だ
その隣に堂々と座っているのが副長の土方歳三さん
俺たちを拾ってくれた人だな
鋭い目をした美形だ
さっきからずっと黙って大人しく座っているいかにも賢そうな人が新選組総長山南敬助さん
言葉使いも丁寧で優しそうな人だ
そして一番組組長の沖田総司さん
にこにこ顔で俺を見ていて
いつもにこにこしてる
さらに、部屋の壁際に固まって座っている三人組
二番組組長永倉新八さん
いかにも頼れる兄さんという感じだ、兄さんというよりは兄貴?←
先ほどハルを散々笑い飛ばした八番組組長藤堂平助くん
未だにしょんぼりしていた
彼は通称犬とよぼう
最後に十番組組長原田左之助さん
赤い髪をした特徴的な人、男の人なのに、色気がある
ふぅ
こんなもんかな…
とりあえず、今この場にいる隊士の名前を覚えたところで
「ミユキって言います。」
ぺこりと頭を下げる
制服はスカートのままだが、この時代の人達には分からないだろう
一応朝持っていたサラシで自分とハルの胸も隠すことができたし・・・
え?なんでサラシ持ってたかって?
・・・わ、悪いかよ
「にしても不思議な着物だよなぁ、それ」
俺の服を見て、永倉さんはしみじみと呟く
「あー・・・っと、たぶん、俺が居たところでは、こんな服が流行ってたみたいです」
「なるほど・・・」
「でもよ、でもよ、どっちかってーとよ、それ、女が着てそうな服だよな」
永倉さんのうなずきの後に身を前に出し興味津々に聞いてきた平助く・・・犬。
俺はそんな彼の純粋な質問に対しただ笑うだけの返事をする
「まぁ、とりあえずだ。着る物に関してはミユキは斎藤のを、ハルは平助の古着を渡してやってくれ」
その場をまとめるように、土方さんの声が響く
「斎藤達が帰ってくるまで待つことにしようか、ほら、君もずっと立ってないで座って座って」
笑顔で俺に話しかけてくれる近藤さん、きっと気まずそうにしている俺に気を使ってくれたんだろう、いい人だなぁ…としみじみ思ってしまう…
→