薄桜鬼|short

□Flavor Of Rum raisin
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私の恋人、沖田総司はこういう人間だった。
それを理解したうえで付き合っているんだけど、納得いかないものは納得いかない。

「ちょっ、ちょー総司っ!!」
「え、何?」

白々しい顔をして総司は、私の所有物であるそれを口にしている。
庶民の私がおいそれと手にできない高級アイス。

それをこともあろうか、いきなり「ちょっと今晩泊めて」と突撃してきたコイツが難なく口にしている。

「私のっ、私が買ってきたのっ、私の私へのご褒美なのっ!!!!!!」

「あ、そうなの。ごめんね」

あー、ムカツクっ。

私の愛しい愛するアイスが、私がシャワーで汗を流してる間にこんな奴に食されていたなんて。

「何がごめんね、よっ」
「あげる。もう飽きたし、いらない」

押し付けがましく差し出された紙カップのそれは総司の手の熱で液体と化していた。
しかも残量はゼロに等しい。
そしてこの、余計に腹の立つフレーズ。

「飽きたってこれ私のでしょっ!!」
「あれ、知らなかった?僕の物は僕の物、郁の物は僕の物でしょ」
「どこのジャ●アンっ!?」

「あーもーそんなに騒ぐなら名前でも書いときゃいいじゃん」
「自分家の冷蔵庫使うのに名前書くバカがどこにいんのよ!!」

総司から「飽きた」と言われた私の愛するアイスの無残な姿。

「私がどれだけ今晩これを楽しみにしてたか知らないくせにぃ」
腹立たしいやら悔しいやらで涙が込み上げてきた。

「え、これくらいの事で泣いてるの?」
バカにしたような総司の態度。
力の限り総司の胸を叩いても、女の力なんてたかだか知れている。

「仕方ないなぁ」
総司は眉間に皺を寄せながら、私を見て笑う。

ちゅっ、

不意に広がるラムレーズンの香りと味。

「こんな味だったよ」
フローリングの上に私の濡れた髪が散らばり、気づけば総司に見下ろされているこの状況。

「馬鹿総司っ」
「うそ、こっちの方が今晩の楽しみになくせに」
「ち、違う、断じて違うっ!!」
「顔が真っ赤だよ」

とても反論し難く顔を背けると、総司が嫌味に笑う。

「アイスなんかより僕の方がいいでしょ」
「うぅ…」

そんな熱い目で見つめられたら反論も反抗もできず、私は総司の言い成りになってしまう。






「今度はバニラがいいなぁ〜」

「自分で買ってきなよ」

「高めの物って身銭切らないからいんだよねー」

「鬼っ!!!!」



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