薄桜鬼|short

□痴話喧嘩
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教室に平助と二人きりの放課後。

あー苛々する。
すぐ隣でぽりぽり、ぽりぽり。

「ちょっと平助ー」
「何?」

ぽりぽり、ぽりぽり。

ポテチを咀嚼する音。

ほんと、苛々する。

「何?じゃないわよっ!!」
私の大声に平助の口から咥えたポテチが一枚落ちる。

「ダイエットしてるのにっ」

「え、そうなの?」

「そうなのっ!!」

「じゃぁ、言えよなー」

「察してよ。この微妙な乙女心を」

「んなの、言わなきゃ分かんねーよ」

「どうせ平助みたいに引きしまった腹筋のやつになんか言ったって分らないわよっ」

「だから、ダイエットしてるなら言えっつてんだよ」

「言えるわけないじゃん!!!」

「何で!?」

きっと傍から見れば、
あぁまた始まったよ。あいつらの痴話喧嘩。
ってところだろうけど、このダイエットの件はそんな痴話喧嘩ところじゃ済まない。

「な、何でって!!いざって時に平助に見られた裸が脂肪まみれだったら嫌だからっ!!!!」
やばっ、
思わず勢いで言ってしまった。

目の前で私の大敵、油菓子の袋を持った平助が沸騰した顔色で唖然としている。

「こほん…あのな、郁にんなこと言われたら、俺今晩どうすりゃいいわけ?」
咳払いをした平助が赤い頬を指先でかきながら、ぶつぶつ言う。

「いや、その、これは、今晩どうとか言ってるわけじゃなくって」
私まで茹でダコみたいな顔して弁明する。
まぁ弁明するまでもなく、言葉通りの意味のダイエットなんだけど。

「あーもー、違う、違う、郁はダイエットなんかすんなって」
「何でよ?」

「ガリガリになって胸なくなっても嫌だし、腹筋しすぎて腹割れても嫌だし、今くらいが丁度いいんだよっ」
照れながらぶっきら棒に言い放つ平助。
だけど、それは十分本音だと分るから素直に嬉しくて、私の顔はまた真っ赤になる。

「平助のバカ」
「何で俺がバカなんだぁ!?」


「うっせぇバカども、さっさと帰れっ!!」
土方先生の怒号と共に二人仲好く頭を叩かれる。

「痴話喧嘩は帰ってしろ!!」

どうやら全部聞かれてたみたいで、恥ずかしいことこの上ない。





「これから俺ん家来るか?」
平助の言葉にこくりと頷いた。

夕陽が眩しくて二人して真っ赤に染まる。


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