GK|short

□可愛い焼きもち
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「いっけぇ〜!!!!!!」

「あーーーーー惜しいっ!!」

アキヲは一人テレビの前で、前のめりになって煩くサッカー観戦している。
そんなに必死で代表戦見て応援してるのはいいけど、やっぱり俺としては釈然としない。

風呂上がりの俺は冷蔵庫からミネラルウォーターを取り出して、リビングのアキヲを横目で見ながら喉を潤す。


「良則っ、いますっごい惜しかったのぉ〜」
「へぇー」

興味なさそうな俺の返事にすら、興味を示さないアキヲ。

ったく、何だよ。
いつからそんなに日本代表を熱心に応援するサポーターになったんだ。

「きゃぁー、あぶないっ!!!!」
相手のシュートは日本のDFの身体に当たり、枠を外れた。
胸を撫でおろすアキヲ。

「あー、コーナーキックぅ〜」
拳を握りながら応援するアキヲと、冷めた目でテレビとアキヲを見る俺はとても対照的だ。

お前の後ろにいる男はプロだぞ。分ってるのか?
俺の出てる試合はそこまで必死に応援してるのか?

プロサッカー選手の俺を無視して、ここまで必死に代表戦応援できる恋人の無神経ぶりに呆れてしまう。
大袈裟に溜め息を吐いて、どすっとソファに座るけれど、アキヲはまったく気にしていない。


「ひゃぁぁぁぁっ!!!!!!!!」

「おーーーーー」

枠を捉えたヘディングを、ゴールキーパーが見事に弾くとアキヲの悲鳴のような歓声も一際甲高く響く。

「あーもー星野さん、カッコいいーーーー」

確かにファインセーブであることは認めるが、アキヲの今の発言は聞き捨てならない。

「すごいよねー、さっきから攻められてるけど、星野さんファインセーブだよぉ。神がかってる、もぉ、あれ神だよー」

おいおい、俺を無視してどんだけ褒めちぎるつもりだ。

「ね、良則、やっぱ星野さんってかっこいい?」

無邪気にえぐい質問だな。

「さぁ」

苛立つ俺の声に、アキヲはきょとんと目を丸くした。


「あー、もしかして焼きもちぃ?」
俺の顔を覗きこみ、アキヲは面白おかしそうに言う。

「うっせー」
「あは、図星だー」
俺の頬を突きながらアキヲは笑う。

「笑うな!」
しつこく俺の頬を突くアキヲの腕を掴んで、床に押し倒す。

「星野、星野うっせーな」
「だって、焼きもち焼いてる良則可愛いんだもん」
俺に見下ろされ、えへへ。と付け加えて笑うアキヲ。
余計に腹が立つ。

「お前っ」
すべて分ったうえで、俺をからかうような事をしていたと知り、俺はアキヲを怒鳴ろうとした。

「そういうところも好き」
アキヲの腕が俺の首に回される。
そしてそのまま、アキヲの唇が重ねられた。

ちゅっ、と軽いリップノイズの後に離された唇。

「アキヲ、お前なっ」
不意打ちを食らった俺は真っ赤な顔を抑える。
「やだ、良則君真っ赤」
子供の様に無邪気に笑うと、アキヲは途端に真剣な目をした。

「良則が知らないだけ。私が祈るような思いで良則の出てる試合を見てるの。怪我したらどうしようとか、気が気じゃないんだから」

初めて知った。

普段はフロントスタッフとしてチームに関して意見を言うことはあるが、俺個人のプレーに対してはあれこれ言わないアキヲ。
まったく興味がないのかとさえ思っていたのに、それがまさか俺を応援して、心配してくれていたとは。

「あーもーなんか、あたし恥ずかしいっ」

いや、恥ずかしいのはそんなこと言われた俺の方だろ。
真っ赤な顔をしてアキヲは唇を尖らせていた。

アキヲの身体を抱き起こし、アキヲを抱きしめた。

「ベテランの意地見せてやるから、しっかり見とけよ。俺だけ見とけ」
「良則かっこよすぎー」
もう一度、今度は俺からキスをして、アキヲのTシャツに手をかける。
捲り上げるとアキヲは困ったような顔をした。

「明日試合って言ってなかったっけ?」
「余計な心配すんな」
へへ、と笑ってアキヲは腕を上げてTシャツを脱ぐのを手伝った。

あんなこと言われて、ここでお預け食らう方がよっぽど明日にひびく。







この世の中に良則以上にカッコいい男なんていないんだから。
なのに、これくらいで嫉妬しちゃうなんて、あたしすっごく愛されてる?

明日も良則がいっぱい活躍しますように。


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