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□エスコート
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代表戦のエスコートキッズに選ばれてウキウキしていた。
でも、あたしが手をつないで歩くのは…

達海猛。

成田選手がよかった。
あたしも将来、成田選手みたいなサッカー選手になりたい。

前方にいる成田選手の背中を見ながら、溜め息をついた。
すると、私の隣の選手は大アクビをした。

なんかムカツク。

「成田選手がよかった」
「じゃぁ変わってもらえよー」
「言った。無理だった」
「じゃぁ達海選手で我慢しとけ」

「もぉ、なんでアクビなんてしてんの」
「だって、ねみぃもん」

ふわぁぁぁ〜

こんなに緊張感のない人が代表なんてなっていいの?
小学生ながらに素朴な疑問が湧いた。

選手入場になって、私も前に倣って達海と手をつないでピッチに入場する。

すっごい。
スタジアムってこんなふうになってるんだ。
大きくて、人がいっぱいで、ドキドキする。

でも、あたしと並んで入場するはずの達海は頭をかきながら、何か頼りない。
あたしが手を引っ張って、やっと付いてくる感じ。

カッコ悪い。

もぉ達海なんか大嫌い。

「ちびっ子、名前は?」
「アキヲ、結城アキヲ。ちびっ子じゃないし」
「アキヲはフットボールしてんの?」
「してるよ。将来は女子の代表に入って成田選手みたいにチームの中心になるの」
「へー、そー。そりゃデカイ目標だなー」
「でしょー」

得意げに言ってみたけど、半笑いの達海はまだ寝惚けてる。

飲み込まれそうな独特の雰囲気。
そんな中での国歌斉唱。
「アキヲ、見とけよー。ここに居る奴、みーんな驚かせてやるからなー」
「ふーん」
やっと目が覚めたようで、達海のアクビは止まった。


でも試合を見て、私は達海と手をつないだことが嬉しく誇らしく思った。
子供ながらに達海猛という選手がかっこよく、単純にスゴイ選手だと感じた。

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