GK|背中あわせ
□case of H 5
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今年は達海さんが帰ってきて大波乱のETU。
何かにつけて誰かと衝突することばかり。
それでもチームは今まで以上にまとまりを見せているように思えた。
でも、この人は屋上で、大の字になって…
寝ていた。
しかも大変気持ちよさそうに寝てる。
明日試合なのに、緊張感が感じられない。
試合中ベンチから大声で指示出してる時なんて、監督してるなって思うけど、今はこの気の抜けた寝顔。
不思議とこっちの力も抜けてくる。
後藤さんが探してたし、起こした方がいいんだろうけど、達海さんの寝顔をもう少し独り占めしたくて黙っていた。
別に探すように頼まれたわけでもないし、たまたま見つけただけだし…。
寝息が聞こえる。
顔を覗きこんで頬を突いてみた。
起きない。
ちょっとつねってみた。
起きない。
だから"フー"と、耳に息を吹きかけてみた。
でも起きない。
起きないから、もうちょっと意地悪してみたくなった。
いつもされてる分、ほんの仕返しのつもりで。
触れるか触れないかくらいの微かなキス。
自分からしておいて何だけど、思わず顔が真っ赤になった。
何て恥ずかしいことしてるんだろ。
いたたまれなくなって私はこの場を逃げ去った。
起きないでくれてよかったと心底思う。
◇
頭をかきながら、身体を起こして、夢でなかったことを確かめようとした。
けれどそこに姿はなく。
途中から気付いていた。
けれど寝てるふりをして楽しんでみた。
結果、意外と大胆な奴だと判明した。
「達海っ!やっぱりここかっ!」
「何だー後藤かぁー」
「何だじゃない。サボるな」
「休憩だよ。休憩。監督にも休息は必要なんだよ」
「てか、お前、顔赤いぞ」
「うーん、日差し強かったからじゃない?」
「まぁ、何でもいい。とりあず降りて来い」
「そういえば、さっきアキヲちゃんも真っ赤な顔してたなぁ…」
アキヲが真っ赤な顔ねぇ。
積極的な照れ屋だな。あいつは。
「働きすぎで身体壊してなきゃいいけどな」
「え、後藤。俺の心配はしてくれねーの?」
「適度に息抜きしてるから心配ないだろ、お前の場合」
「あ、そーですか」
あぁ熱い。
頬も耳も唇も。
身体全部が熱くて熱くてどうにかなってしまいそうだ。