戦国BSR|short

□愛と欲望のハンバーグ
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勢いに任せて言ったのはいいけれど、いざとなると尻込みしてしまう。

ひき肉、玉ねぎ、卵にパン粉。キッチンに並べられたそれらの材料は私を待っている。


「さっきまでの威勢の良さはどこへ行ったんだ」

カウンター向こうのダイニングチェアに反対向きに座った政宗は偉そうに私に言葉を投げかける。

「うるさい!集中できないじゃない、黙っててよ!!」
ニヤニヤと嫌味な笑いを浮かべる政宗が憎く思えてつい怒鳴ってしまった。

「ほぉ、それじゃぁお手並み拝見といこうじゃねぇか」
明らかに上から目線の態度が気に食わない。

包丁とまな板を用意して玉ねぎの皮を剥く。カウンター越しの視線が刺すように痛い。

手際の悪さを無言で指摘されているような気がして「何よ」と言うと政宗は「何も」と返すだけだった。

えっと、何すればいいんだっけ…

玉ねぎの皮を剥いたのはいいが、そこからどうすればいいのか本気で分からない。
そして私は激しく後悔する。

言うんじゃなかった「私だってハンバーグぐらい作れるわよ!」なんて。
料理上手な恋人に妙な嫉妬を覚え、成り行きで言った自分を今更責めても時すでに遅し。

「みじん切り」
止まった手を見て政宗が言う。
「分かってるわよ!」
どうして私って素直じゃないんだろう。こういうときは「ありがとう」って言うんじゃないの。私の馬鹿。

後悔に後悔を重ねて、私はボロボロと大粒の涙を流しながら玉ねぎを刻む。

「指、切んじゃねぇぞ」
そんな政宗の親切心にも私は頷くのが精いっぱい。目と鼻を刺激されて辛くて辛くて堪らない。

これでもかというくらいに玉ねぎを刻み終えボウルに入れた後、その中にひき肉を開けようとした。

「Stop!」

「何!?」
政宗の制止する声で、ひき肉は私の手から零れそうなりながらも玉ねぎの中へは投入されずにいる。

「先に玉ねぎ炒めろ」
「何で。生の方が食感が残っていいんじゃないの?」
「生だと焼くときに形が崩れやすい。とくに郁みたいな不器用じゃ見れたもんじゃねぇだろ」
「不器用って何よ!それに出来上がる前から見れたもんじゃないって失礼ねっ!」

文句を言って唇を尖らせながらも、私は政宗先生の指示通りに玉ねぎを炒めるべくフライパンを取り出した。

「てか、郁。アンタ玉ねぎ焦がしそうだから、耐熱皿に玉ねぎ入れて、その上にバター乗せてレンジで温めろ。」
「何よ人のこと馬鹿にして、もう黙っててよ!!」

冷蔵庫からバターを取り出し、怒りにまかせて扉を閉めると「壊すなよ」と政宗に指摘され余計に腹が立つ。

眉間にしわを寄せたまま政宗の言うとおりに作業を進める。正直言って分からないからいわれる通りにするしかないんだけど。
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