PP|不可侵領域

□PP|不可侵領域
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「本気か?」
「何が?」
更生施設へ向かう車の中で狡噛監視官が助手席の佐々山執行官に問う。
狡噛の表情は険しいが、その反面佐々山は素知らぬ顔で煙草の煙を吹かしている。

佐々山は分かりきったようなことを尋ねる狡噛に辟易していた。

「二係の、」
「ったく、しつこい狡噛」
狡噛の言葉を遮るように佐々山は声のトーンを上げて、持っていた缶コーヒーの口に煙草を押し付ける。

"女好きが高じて潜在犯落ちした男"が口癖の佐々山が、あの佐々山が、まさかそんなことを口にするとは露ほども思わなかった。
だから狡噛は佐々山の言葉に疑う事しかできずにいた。


その言葉を聞いたのはもう随分前になる。
あまりに何気なく言われたことに一度は聞き流してしまったほど。

「二係の伊紅ちゃん知ってるか?」
「結城監視官のことか」
「そうそう」
「何かあったのか?」
「付き合ってる」
「はぁっ!?」
何気なく挨拶をするかのようにさらりと言い流した佐々山。
一度口に含んだコーヒーを噴いてしまうほど狡噛は驚いた。

「…また、女好きの悪い癖だろ」
「本気だって言ったら?」
「女好きが高じて潜在犯落ちした男の本気なんて信用できるはずがないだろう」
汚れた口元を拭いながら狡噛は佐々山の表情を見た。

何を考えているのか分からない普段の瞳とも違う。ましてや狡噛の知る刑事の佐々山の眼でもなかった。

「どうしたんだろうな、俺」
窓から差し込む日差しのせいか、から笑いする佐々山が少し照れているようにも見えた。
そんな佐々山に、ただただ狡噛は目を見開いて驚くばかりだった。


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