薄桜鬼|series
□24の勘違い
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12月24日
またの名をクリスマスイブ。
いわゆる聖なる夜。
街中を彩るイルミネーションの数々。
友達や家族、恋人のクリスマスパーティー。
幸せオーラに満ち溢れる今夜、私は職員室と言う名の身も心も凍てつくような職場でひっそり過ごす。
学校は冬休みに入り、生徒のいない校内は静まり返っている。
というか、夜にもなれば仕事を終えた職員は帰ってしまい、ますます物悲しさを際立たせるほどの静寂。
私はというと、土方さんに頼まれた仕事をしていたのだけど、手際の悪さから、さっきからまったく捗らない。
何が悲しくてクリスマスに仕事なんか。とも思えるが、相手のいない寂しい私にとっては仕事があったほうが有難い。
来週の補習用のプリントを作るという寂しい仕事だけど、世の中の幸せをあてつけられるよりかはマシ。
心身ともに極寒であることに変わりはないけど。
「はー」
溜め息を吐いて、伸びをして、一息置く。
ガラッ――
職員室のドアの開いた音に、腕を伸ばして仰け反っていた私は椅子から落ちそうになった。
「うわっ!!」
「何だ、"うわっ"て」
不機嫌そうに呟いた声の主は、一旦席を離れていた土方さんだった。
「あ、いえ…」
「終わったのか?」
「まだもう少し…土方先生は?」
「いや、まだだ」
「コーヒー淹れますね」
向かいの椅子に腰かけた土方さんに「すまねぇ」とだけ告げられた。
特別気の利いた事も言えず、二人きりの職員室に流れる沈黙という空気が重い。