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□10:目撃する男
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正直、驚いた。面食らった。
思わず出てきたシャワールームに引っ込んだくらいに。
「イヤ…こんなとこ…」
「誰もいねーじゃん」
「ここ職場だし」
「俺ん家でもあるし」
きっと誰も居ないと思っていたんだろう。
達海さんと結城さんがキスしていた。
あんなに深く熱いキスしているなんて。
二人のあんな顔見たことない。
だから驚いた。
そして一つの結論が導き出された。
達海さんの相手が結城さんだと言う事実。
そういう気分になるの分らなくもないけど、ちょっとは場所を弁えてもらいたいな。
まだ、俺らいるんだし。
様子を見計らってシャワールームを出ると、結城さんと出くわした。
「お疲れさまです」
「あ、杉江さん、お疲れさまです」
真っ赤な顔。
関係ない俺まで熱くなってしまうほど、潤んだ瞳と艶めいた唇。
とんでもないモノを見てしまった。
というか、当てられたな。
*
明日の試合に備えてコンディションは最高に良い。
上機嫌で通路を歩いていると、通りがかったミーティングルームから妙な会話が聞こえた。
「…の匂いがするね」
「何が言いたいの?」
「嫉妬しちゃうよ」
「馬鹿みたい…」
これは覗き見じゃねぇと言い聞かせて、薄っすら開いた扉の隙間から覗いてみた。
ジーノとアキヲが二人きりで、何やら妖しい雰囲気を醸し出してるじゃねぇか。
「いつもどんなキスをするの?教えて」
「やっ、んっ」
ジーノが意外と強引に瀬那にキスをした。
なにぃっ!!
あいつらそういう関係だったのか!?
微かに甘い声が聞こえてくるのが無性に腹が立つ。
アキヲもアキヲだ。嫌ならもっと全力で拒否しろ。あんなの嫌のうちに入らねーんだよ。
そもそも何であんな男選ぶんだっ?
他にもいるだろうが、俺とは言わないが、もっとまともな男が。
俺の勝手だが、アキヲはもっと硬いイメージがあったのに。
チクショー、所詮は外見ってことかぁ!!
てか、いつまでキスしてんだ!?
見せつけてんのかっ、アイツら。
ロッカールームで着替えながら、俺たちは同時に尋ねた。
「なぁ、クロ」
「なぁ、スギ」
顔を見合わせ、「やっぱりいいや」と声を合わせた。
言いたいけど、言い辛い。
やっぱこの話は止めておこう。
「ねぇタッツミー」
「何だよ、ジーノ。つーかもぉ帰れよ、明日試合なんだからさ」
慣れたように俺の部屋で寛ぐジーノ。
「アキヲにタッツミーのキスの味教えてもらったよ」
「はぁ!?」
「唇でね」
「ちょ、おまっ!!」
何やってくれてんだ。
この男は。
「で、思ったんだけど、僕はタッツミーもアキヲもどちらも愛してあげられるよ」
こいつは飛びきりの笑顔を乗せて、藪から棒にとんでもないことを言い放った。