ギアス短編小説
□【夕暮れの屋上】★R15
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【解説】このお話は1作目ではスザクとルルーシュが恋人だった設定で書かれています。
皇帝によって記憶を書き換えられたルルーシュは、スザクと恋人だったことを忘れたふりをしています。
R27話でスザクがルルーシュに自分の携帯を渡し、ナナリーと話をさせているところから物語りは始まります。
それを踏まえたうえでお読みください。
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指先でといた黒い絹のような髪
白い肌に残した赤い情事のあと
唇が覚えている蜜の甘さ
君の記憶には それすらも残っていないというの…
【夕暮れの屋上】
ルルーシュがスザクの携帯を片手に一瞬戸惑った顔をしてそれを耳元に当てた。
アッシュフォード学園の屋上。
濃紺のベールを纏い始めた空が二人を包み込もうとしている夕暮れ時。
「…もしもし…」
スザクに背を向けるように向きを変えルルーシュが受話器の向こうの相手に声をかける。
その背中は、スザクのよく知る細くしなやかなラインを描き、黒い絹のように細い髪は風に吹かれていた。
皇帝によって記憶を書き換えられたルルーシュには、スザクは友達としてしか見えていない。
かつて、ルルーシュがゼロだと知らなかったころは2人は恋人だったはずなのに…。
携帯を手にしているルルーシュは困惑の表情を浮かべたまま、スザクを見て携帯を返してきた。
「…なんか、人違いをしてるみたいだったぞ?」
(ルルーシュ…やはり記憶は戻っていないのか?)
「…そぅ、…どうしたんだろうね。」
あいまいな笑みを浮かべ、スザクはルルーシュから携帯を受け取りポケットに閉まった。
「それにしても、会長は本当祭り好きだな…。」
屋上にまで聞こえてくる生徒たちの賑やかな声を耳に、ルルーシュが屋上の手すりに凭れ下を見下ろしながら言った。
「…そうだね…。でも、そういうところに、僕は何度も救われたよ。」
スザクもルルーシュと同じように下を覗くように手すりに寄りかかり言葉を返す。
アッシュフォード学園に入学したばかりのころのスザクは浮いていた。
イレブンだというだけでも迫害されるのに、クロビス殺害の容疑までかけられていたのだから無理もない。
そんなスザクをミレイ率いる生徒会が受け入れてくれた。
様々なイベントや行事をともにやりながら学園の皆とスザクを溶け込ませていってくれた。
「…あの人は凄い人だよ。」
スザクがポツリと零すと、ルルーシュは“いろんな意味でな…”っと笑った。