オリジナル小説

□【溢れ出る涙 拭う左手】…長編小説
1ページ/31ページ



瞳に映し出される視界が涙に霞んでぼやけている



押さえ込まれた両腕は
もう…自由に動く事すら出来なくて



俺を取り囲んだ奴なの
…嘲り笑う声だとか
        
俺を押さえ込んだ奴らの
…薄汚い腕だとか



もう痛みすら感じなくなってきている       


体が       

心が



抵抗するだけ無駄なのか    抵抗する事を考える事を許されないのか



俺は確かに人間なのに・・・
俺は確かに人間だったはずなのに・・・



一体俺が何をしたって言うんだ



俺は只普通に生きて…

オレはタダフツウにイキて…   
おれはただふつうにいきて…




ただ・・・
普通に生きてきただけだったのに・・・






 【溢れ出る涙 拭う左手】








「嫌だぁ〜・・やめろぉ・・・」

喉元から切に訴える涙声が、薄暗く湿気の蒸す部室内に弱々しく響き渡る。

無数に伸ばされた男たちの手が、その声の主を押さえつけ嘲り笑っている。

3人の男たちが黒髪の少し小柄な体を押さえつけ
その制服を引き裂きに掛かっていた。

「うるせ〜んだよ!!」

強く発せられた言葉と同時に“ガスッ”っという鈍い音が響き
黒髪の少年の口元からは赤い血液が滲んだ。


引き裂かれた制服の内側の白い肌は
あちらこちら蹴られ、殴られ、赤紫色の斑点が無数についている。


「うわっ、馬鹿!・・・顔はやめろよ、先生にバレルだろ。」


誰かがそんな事を言いながら、少年を殴った奴を怒鳴りつけた。


「わりぃ・・・つい熱くなっちまった・・・」


大して反省するでもない声が少年の頭上で交差する。
   (誰か僕を殺して・・・・)


半分だけ開いた少年の瞳からは無数に涙が零れ落ちている。
でも、それを吹いてくれる者等・・・ここには居るはずも無い・・・。


殴られた頬がジンジンと痛む・・・
押さえつけられた腕が床にこすれ、血が出てきている・・・

でも、そっちは痛くない・・・
長い事踏みつけられ、押さえ込まれ・・・

麻痺してしまっているらしい


少年の瞳が光を失っていく
もう・・・どんなに抵抗した所で、この状況を覆すことなんてできる訳が無いと解ってしまったから・・・。


少年に馬乗りになっていた、一番体格の良い奴が、露わになった下半身を抱え上げ
無理やり蕾に押し入ってきた。

慣らされる事も無く 解されたわけでもなく・・・
まるで引き裂くように己の欲望を突き立ててくる。

「・・・・・。」

その痛さに唇を噛締めながら少年は一言も声を発する事も無く
痛みと羞恥心に耐えていた

「凄げぇよこいつん中・・・堪んねぇ・・・」

少年の体内に侵入してきた奴がガンガンと腰を打ちつけながら歓喜の声を上げる。
裂けた蕾からは血が滲み、ヌルヌルとそいつを咥えこんでいく。

「・・・っ・・・・。」

余りの痛さに少年の噛締めていた唇が切れた。
口内に広がる鉄の匂い・・・。

下半身に感じる自分とは別の雄の部分・・・

内臓が競り上がってくる様な感覚と、想像をはるかに絶する痛みから吐き気がした・・・


「おい・・・お前も気持ち良いだろ?」


無責任な言葉が少年につきたてられる。
そんな言葉などに耳を傾ける余裕など無い少年。


「オラッ!・・・俺様が突っ込んでやってるんだ・・・気持ちいって言え!!」


理不尽な言葉と共に、そいつの拳がみぞおちに打ち込まれた。


「グハッ・・!!」


目を見開き、生唾が口から吹き出た。
   (もう・・・殺して・・・・・)


回りの奴らの、楽しいものでも見るような笑い声が脳内に響いてくる。


「ほらっ、言えよ。気持ちいですって・・・」


ガンガンと打ち付けられる腰に吐き気を感じながら
少年はサイド唇を噛締めた・・・

(言うもんか・・・そんな事、死んでも言うもんか・・・)


見開き相手を見る瞳・・・
自分を組み敷く者を、睨みつけた・・・


それが少年にとって唯一できる抵抗・・・


「なんだその目!!・・・お前ムカつくんだよ!」


言葉と同時に今度は頬を撃たれた。
さっき打たれたのと同じ場所・・・。


「少し頭が良いからって見下した目ぇしやがって・・・。お前みたいに出来る奴が居るから俺たちは苦労するんだ!!」


荒げられた言葉と同時に
再び少年のみぞおちに拳が振り下ろされる。

「・・グッ・・・!!」

痛みを感じたと同時に、少年の瞳がゆっくりと閉じられていく・・・。
ぼやけた視界からは世界が消えゆく・・・。

逃げようと力を込められていた腕は、意思を無くし。

少年の裸体は人形となった・・・。


「やっと大人しくなりやがった・・・」


少年を組み敷く奴はそう呟くと、己の欲望を解放つためだけに再び体を揺らし始めた。


「おぃ、早く終わらせろよ。堪らねぇ〜、早く変われ!」
「焦んなよ、今変っから・・・」
「一人だけ楽しんでんじゃねぇょ・・・早くしろよな。」
「解ってるって・・・こりゃ、そこらの女なんかより全然いいぜ。マジ嵌まる。」
「解ったから・・・とっとと終わらせろよ。」




人形と化した少年はその後意識を失ったまま。
その場に居る4人に好き放題やられた・・・。



意識を失ったのはのは不幸中の幸い・・・
その後与えられた痛みも 辱めも 記憶には何一つ残りはしないのだから・・・。




                   *




「さてと・・・そろそろ帰っかな。」
「お前、今日塾だろ・・・。遅刻するんじゃン」
「やべぇ、遊び過ぎた。早く行かねぇ〜と・・・」
「相変わらず抜けてんなぁ・・・」


そんなどうでも良い、この状況に不釣合いな会話が少年の耳にかすかに届く。

ガチャン・・・

重く鳴り響いた鉄の扉が、そこにはもう奴らが居ないのを教えてくれた。

少年の瞳は閉じたまま

その唇はキツク噛み締められたまま・・・

僅かに纏っていた制服のワイシャツの前を力一杯握り締め・・・

少年は声も上げずに泣いていた

涙が唇に流れ込む

切れた唇にそれが沁みた・・・




何で生きているんだ・・・

こんなに痛い目にあったのに・・・

何で生きているんだ・・・

こんな屈辱を受けたのに・・・




どうして俺の頭は正常に動いている・・・

なんで俺は壊れていない・・・




自分がどんな目にあったかも忘れてしまうほど壊れてしまえたら

どんなに楽だっただろう

先ほど閉じた瞳が二度と開かなかったなら

どんなに良かっただろう




(でも・・・俺は生きている・・・)




壊れる事も許されなくて、生きている自分が堪らなく痛かった・・・




これで終わりな訳じゃない・・・


これは始まりに過ぎないんだ・・・




少年は知っていた・・・

彼らは面白い玩具を手に入れたと思っているということを

少年は知っていた・・・

それが飽きられるまではこの遊びが続くということを





噛締められた唇から  また血が滲み出す
出来かけたかさぶたの上から切れた唇


(僕は人間なのに・・・どうして壊れてしまわないんだ・・・)


握ったワイシャツがクシャリと皺より
少年は黒く大きな瞳をゆっくりと開いた



その瞳には 悲しいほどに美しい夕焼けが・・・


からすの鳴き声が聞こえてくるこの時間
少年はゆっくりと体を起こして室内を見回した。



蒸しかえる湿気の匂いに混じり雄の精液の匂いが漂う・・・


「・・・グェ・・・・・」


それに触発されたように沸きあがった吐き気
胃液しか零れてこない体




少年はそんな自分の体を暫し抱え窓の外を見ていた・・・。

悲しげに・・・美しく光を放つ夕陽を見ながら
少年は暫くボーっと夕焼けを見ていることしか出来ないでいた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ