庭球長編小説

□【雨の日の金曜日】★R18
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雨がシトシトと降り出した

教室の窓が濡れている

もしかしたら来るかもしれない

アイツが・・・
俺を・・・・・  


“迎えに来る” 

そんな予感が
当たり前の様に思い浮かんだ

だって今日は金曜だから…



【雨の日の金曜日】




「よ〜し・・・今日はこれで終わりだ・・・気をつけて帰れよ。」

担任の声が教室に響き渡る
ざわめき立つ教室内

「お〜ぃ裕太。今日雨だし、部活休みだろ。帰り何か食っていこうぜ」

裕太はクラスメイトの誘いに苦笑いして、首を横に振った。

「悪い…今日はパスな…」

鞄に教科書を詰めるでもなく、足早に席を立ち裕太は教室を後にした。

「なんだよ・・・付き合い悪いな・・・」

そんな批難の声も気にならない。
だって・・・なんだか胸が騒ぐから・・・。

足早に抜けた下駄箱を通り越し、傘も差さずに歩き出す。

多分アイツは待ってるから・・・)

近づいてくる校門。
見覚えのある水色の傘が揺れている。

その傘の持ち主はつまらなそうに下を向き
                (多分・・・俺を待ってるんだ・・・・)

気付かない振りして通り過ぎようとした裕太の腕を、傘の持ち主が掴んだ。


「待ってたよ、裕太。」


見慣れた笑顔が瞳の端に映る。
その腕を掴んだのは不二周助。


「何で傘、持ってないの?」


裕太の腕を掴んだまま、不二は半分だけ傘を差し出して微笑み尋ねる。

「面倒だから・・・寮、近いし・・・」

成る程っと言うように、周助は頷き笑って。

「でも、今日は家に帰ってくるでしょ・・・。一緒に帰ろう。」





微笑む兄貴には勝てるわけもなく、俺は結局傘に入って家に向かう事にした。





雨の日の金曜日・・・周助は大抵俺を迎えに来る・・・。

俺もそれは解ってる・・・そして少し楽しみだったりもする・・・。




2人並んで歩くのは、多分この金曜日だけ

雨の降る金曜に、裕太は傘を差さないから

傘の無い裕太に、傘を差し出すのは周助の役目だから





「やっぱり今日も傘差して無かったね」

「寮近いのに・・・面倒だし・・・」


先ほど口にした言い訳を、再び言いながら裕太はチラリと周助をみた。

自分より少し肩の位置の低い相手。

でも、それは見た目だけ・・・

背が幾ら大きくなったところで、存在感が・・・まるで違う・・・・


              (何時まで経っても・・・追い越せないのか・・・・・?)


何度考えたかも解らない問い。
そして今日もまた、考えている・・・肩を並べて・・・歩きながら・・・。





                            *





「はい、裕太・・・」

暖かな湯気が立ち昇るティーカップを裕太に差しだし、周助は微笑んだ。
          
家に着いたばかりの2人。

季節はもう秋・・・・そこまで寒い季節でもないけれど、雨に濡れた裕太を気遣って
周助は紅茶を入れてあげたところだ。

「あっ・・・有難う・・・」

それを手を伸ばし受け取る裕太。
少し落ち着かない感じで、座っていた。


だって、ここは周助の部屋だから・・・。


暖かな紅茶に誘われるように、裕太はカップに口をつける。
甘い香りと、心地よい渋みが、温かく体を通っていくのを感じた。

「どう・・・美味しい?」

尋ねながら、周助は裕太にフワリとバスタオルをかけた。
そして背中側から、裕太の髪を優しく拭く。

              「んっ、美味いよ・・・兄貴の入れた紅茶は何時も・・・」

その言葉を微笑んだまま聞く周助。

髪を拭く手を止め、周助は横から覗き込む様にして裕太の唇に、自分の唇を重ねた。
甘い香りが、周助の唇にも移る。
 




そう・・・2人はそんな関係・・・





触れた唇を一瞬離し、周助は裕太の持っているカップをそっと取り床に置いた。

裕太は離れた唇を追うように、少しだけ周助の方に体を向けた。



「アレッ・・・足りなかった?」



クスクスッっと小さく笑った周助に、裕太は苦笑いを浮かべ続きを強請る。

再び触れあう唇  次第に絡まりだすお互いの舌

甘い濡れた音が部屋を支配し始める。




「濡れた服・・・何時までも着ていたら風邪をひくね・・・」

「だったら、兄貴が脱がせてよ・・・」



         
始まりは突然。
まるでそうなる事が当たり前だったかのように体を重ねた2人・・・。





そう・・・あれは数ヶ月前・・・まだ太陽の光輝く夏の初めの出来事・・・。






「あっ・・・・ねぇ、我慢できないよ、触って・・・・」

甘い声が周助を誘う。

「裕太ってば好きだよね・・・。触って欲しいの?」

周助の言葉に、裕太はゆっくりと頷く。
周助のしなやかな指が、裕太の自身に服の上から触る。
瞳を細めてビクッっと反応する裕太。


「可愛い裕太・・・。もっとその顔見せて・・・」


不二はスルスルと裕太の服を脱がし、その肌に唇を這わす。
触れられた肌は、ジワジワと熱をもつ。






互いに触れる肌・・・


この肌の内側には・・・   同じ血が流れているのに・・・




            
当たり前の様な事は  もう考えるのはやめたはず・・・




            
こうなる事は・・・  多分運命だったんだ・・・







            
何週間か振りに触れた肌・・・
            
我慢など出来るはずもなく、裕太は貪欲に周助を求めた。


            
露わになった自身を口に含まれ、裕太は堪らず1度目の精を放った。
            
ドクンっと脈打ち、流れ込んできた精液を、ゴクリと飲み込む周助。


            
唾液と、口内に残る精液をタップリと指先に絡め、周助は裕太の蕾に指を2本入れる。

            
「クッ・・・・」

            
僅かに歪んだ口元が、まだ痛さを感じるのだと教えてくれる。

            
周助は丹念にソコを愛撫しつつ、裕太の自身に舌を這わせた。

            
その行為が、裕太にとっては一番恥ずかしかった。
            
だから大抵何時も“もういいから・・・”っと自分から誘うはめになる。


            
「じゃ、挿れるよ・・・」


            
蕾に押し当てられた周助の自身が、食い込む様に裕太の体に割って入ってくる。

            「ぃ・・・んぁ・・・・!」

            
周助の入ってきた部分は、鈍く痛む。
            
でも、裕太にとってこの瞬間こそが至福の時。








            
誰もが羨望の眼差しで見る不二周助の、素顔・・・
            
憧れ続けてきた 愛しい 愛しい 兄の素顔・・・


            
それを独り占め出来る・・・  唯一の瞬間・・・


            
ソコに見慣れた微笑の表情は無い
            
創られた表情など、この瞬間には存在しないのだ









           
「んっ・・・裕太っ・・・・」

           
熱く寄せられた唇に、裕太は必死で答える。
           
絡まりあう舌、交わりあう身体。








           
この家に他に誰も居ない事をいい事に、2人は互いを求め合った。


           
何度も・・・  何度も・・・  


           
離れている時間を・・・  まるで埋め合わせていくかのように・・・
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