庭球短編小説

□【Guilty feeling】
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肌に触れる感触…
心が求める感触…
戒めの様に心を締めつける罪悪感…
肌に残る あの人の香りが 痛く心を 締め上げていく…。
コレが悪夢だというのなら…早く目を覚ましたい…。

【Guilty feeling】

夕暮れの河原に寄り添い座る2人の影、じっと黙ったまま…会話の無い時間だけが過ぎていた。
「どうしたの元気ないね…」
リョーマの顔を、心配げに覗き込む菊丸…それに首を横に振るリョーマ。
「そんなんことないッスヨ・・・」
上手く笑えない頬がピクリと僅かに引き攣った。
そんな笑顔に菊丸は黙って“そう…”っと頷いた。

今はデート中のはず…なのに全然楽しくない。
重い空気が2人の間を支配していた。
しかし ソレを感じているのは菊丸だけ…。リョーマの心はここには無い。
(オチビ…何所をみてるの…?)
菊丸の切ない視線がリョーマに向けられる。しかし リョーマがソレに気がつくことは無かった…。
視界に映し出されているはずの景色…しかし リョーマの瞳には映ってはいない。リョーマの瞳に映し出されている光景…それは不二と過ごしたアマイ時間…。
隣に居る菊丸の事も忘れているかの様に、リョーマは虚ろな瞳を瞬きもせず開いていた。空虚に地面を見つめたまま…。

肌に触れた指先

スルスルと表面を辿りうなじをかきあげられる感触

髪をすり抜けていく 相手の細くしなやかな指先が鮮明に脳裏に蘇る…

シャラリと音をたて その指先から零れ落ちていく髪が…もっと触れてくれと言わんばかりに相手の手にすがりつく…。

ねぇ・・・これは罪?

髪に触れていた手が耳元を優しく擽る…肌の擦れる音が心地良い…ユルリと瞳を閉じ 静かに大きく息を吸った…。耳元を擽る指先が そっと唇をなぞる…。

指先が触れた感触に 緊張するリョーマの唇
「いけない子だね・・・」
甘く囁かれた言葉……頷いた自分…。
これは・・・悪い事?

そっと離れていく指先…リョーマの瞳は閉じられたまま…相手の気配が消えていく…。

立ち去っていく足音
(目を開けたら…きっともう居ないだ…)
解っていて開けた瞳…そこに不二の姿は無かった。
小さな諦めの笑いしか出てこない。
リョーマは俯き肩を揺らして笑っていた。揺れた髪から漂うあの人の香り…。
ねぇ…この香りが消える前に戻ってきて…。

不二の消えたであろう場所を見つめリョーマは祈る

聞き入れられない事など 解っていながら

何故惹かれてしまうのだろう…。心も身体も通わせた、最愛の人が居るはずなのに、不二の瞳に吸い寄せられる。

菊丸の太陽の様な魅力とは正反対の、まるで闇夜に浮かぶ 細く頼りなげな青い月…。
不二の瞳がリョーマの心を、乱していく。

ねぇ・・・これは罪??

菊丸の事を嫌いになったわけではない

寧ろ不二にあった後はホッとする

それでも また不二に会いたくなる

その手が自分に早く触れて欲しいと願ってしまう

ただ触れるだけ…特別な言葉も交わさない…

キスをするわけでも SEXをするわけでもなく

肌と肌が会話する

それは 呼吸するほどに自然な感覚

小さく溜息をついたリョーマに 菊丸は視線を逸らした。
「ねぇ、オチビ…誰か他に好きな人でも出来た?」
必死の想いで尋ねられた問い…リョーマはユルリと菊丸ニ視線を向ける。…小さく横に振られた首…。
「そんな訳無いじゃないッスカ…」
その表情に嘘は無い…。

ねぇ…好きじゃない…

でも…触れたい…

コレは罪? いけない事?

「俺が好きなのは菊丸先輩だけッスヨ」
その言葉に菊丸は苦笑いをした。
「それならいいよ…」
上げた視線がリョーマを捕える。
「オチビが俺を好きだって思ってるなら…それでいいや…」
解ってる…相手が自分のせいで痛い想いをしていること。でも…これは恋じゃないってわかってるからもう少しだけほっといて…。

愛に変わる事も有り得ないから…。

コレは罪? コレは罪?

ねぇ・・・ 恋じゃないなら浮気じゃない?…コレの答えは誰がくれるの?
リョーマは菊丸の手を握り、その甲に頬擦りをした。
何故惹かれるかも解らない
何故触れたいかも解らない
それでも求める自分の心…この想いに終止符は打たれる事はあるのだろうか…。

悪夢なら目が覚めて

コレが恋なら良かったのに

コレが浮気だったら良かったのに
そしたら貴方を解放出来る

他に好きな人が出来たと自由にしてあげられるのに

でも…
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