庭球短編小説

□【Last story】
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ねぇ・・・君の香りが残るこのシーツ


羽布団の奥には まだ君の体温が・・・


温かさと


安らぎを 僕にくれている

君の傍は落ち着ける
君の傍は安らげる

でも…そろそろ…
終わりにしなくちゃ…ね…


【Last story】


裸体に絡まる温かな羽根布団

見上げれば暗がりに映し出される天井に
薄っすらと月明かり

動き 布団が心地よい絹擦れの音を奏でる度
愛していた人の香りが

仄かに香る

気だるく… 何時もなら幸せだと感じていられる至福の時

確かにさっきまでそこに居たはずの
愛する人…

瞳を閉じただけで…太陽のような笑顔が瞼の裏に映し出される

自分の肌を指先で撫でるだけで
君の手を…温もりを… 思い出す

心を寄せ… 体を繋ぎ…

君を全身で …ずっと感じていたかった…

恋を告げたのは 僕
君はそれに 答えてくれたね

死ぬほど嬉しくて
怖いくらい 幸せだった

君の笑顔を 独り占めできる瞬間
君の温もりを 感じられる時

僕は幸せすぎて…
他には 何も要らないとさえ思ってた…

何も知らず… 何も気付かず…

その時を楽しんでいられたら
この幸せも もっと 沢山 続いていたかもしれないのに… ね…

何時頃からだろう 君の視線が気になりだしてしまったのは…

何時頃からだっただろう 君の笑顔の質の違いに気付いてしまったのは…

ううん… 本当は最初から解っていたのかもしれない

それでも 真実を見てはならない気がして…

それでも 自分の気づいてしまった事を
なかった事にしてしまいたかった…

僕の愛する人の心
見ているのは  僕じゃない…

気付かない振りをしていたら、この幸せな時間が
永遠に続く…って思ってた…

甘かったのは僕…?

自分を誤魔化し続けるなんて 簡単な事だと思っていたのに…
自分の気持ちに気付かない振りをすることが 
こんなに辛いものだったなんて…

幸せな夢…
泡沫の 幻…

ねぇ、英二…君はどうして僕を受け入れてくれたの…

ねぇ、英二…君は何故自分の気持ちと違うところへやってきたの…

自分の気持ちに欺き続けた英二…

君もこんな辛い想いを どこかでしているんだよね…

好きだと言った僕に 君は温かな笑顔で答えてくれた

でも…

その裏側の 真実に
僕が気付かないとでも… 思ったのかい…

真っ直ぐで 純粋で…
そう思っていた君

でも、それは所詮僕の勝手なイメージでしかなかったのだろうか…

君に騙されることなんて、有り得ないと心を痛めた時期も無くは無い…

心が僕に無いのに…
なぜ…受け入れたりしたのさ…


どうせ傷付くなら…もっと早くに傷つけてくれたら良かったのに…

僕の事を本当は好きなんかじゃないのなら、告白した時に断ればくれれば良かったのに…

そう

あの時に  あの時に  あの時に

でも…ソレが君の優しさだって
…僕は解ってる…

解ってしまうから…
憎み切れないよ…

断る事によって僕を傷つけてしまったら…

君はそんな風に思ってくれていたんだよね…

きっと… 体を重ねていくうちに…
きっと… 心を寄り添わすうちに…

僕の事を好きになるかもしれない…と
そう思ってくれていたんだろぅ…
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