庭球短編小説

□【sunspot】
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覚えているのは けたたましい音をたて 倒れた机

視界に入るは 転がった椅子に
床に倒れている不二の姿

俺は何をしようとしているの
俺は…どうしようというの
冷静に不二を見おろす俺…
たったまま冷めた表情で…

高鳴る鼓動は まるで他人のもののよう
初めて抱いた感情を…いけないと分かりながら…俺は押さえることが出来なかった…

【Sunspot】

冷たい教室の床…。
転がっている不二の身体。
突き飛ばした時にぶつけたのか…右頬が赤くなっている。
勢い良く突き飛ばした身体は、重力に引き寄せられるように、ゆっくりと…まるでスローモーションの様に床へと倒れこんでいった。
けたたましい騒音。…音の主は薙ぎ倒されていく机や椅子。
くぐもる小さな音が、不二の喉元から一瞬だけ聴こえた気がした…。
倒れた机からは零れ落ちたノートや教科書が散らばっている。
カランカラン…っと…鳴り響きながら、零れ出したシャーペン達が小さな効果音を奏でていた…。
「…痛そう…」
その様を至極冷静に見つめている自分。
倒れこんだ不二の足元に静かに佇んでいる。
 (…俺ってば…何してんの…?)
まるで頭の中にもう一人自分が居るかのように疑問が浮かんでくる。
倒れこみ、意識を失っている様子の相手に…そっと近づいた…。
濃紺の学ランの襟元から見える相手の白い肌。
透き通るように纏われたその肌の下には薄っすらと細い血管が見える。
首筋にそっと指を伸ばすと…トクン…トクン…っと脈が触れた…。
「…死んじゃってかと思った。」
ボソリと呟くように菊丸はそういうと、襟元から学ランのボタンを外し始める。
 (…何やってるんだろう…)
ワイシャツをズボンの中から引き出しながら…そのボタンも外していく…。
 (…ズボンも…脱がす気かな、俺…)
自問自答しつつ…常に何処か冷静に…まるでそうする事が当たり前の様に不二の衣服を剥がしていった…。
カチャリ…軽くなるベルトの金属音。
スルスルとズボンと下着を引き下ろす衣擦れの音が
静まり返った教室内に木霊す。
 (…早く起きないと…やっちゃうよ…?)
胸元の肌蹴た制服…
下半身はむき出しに…
艶めかしい 姿…
覆いかぶさるように意識に無い不二の身体にまたがると、菊丸は瞳を伏せがちに不二の顔に自分の顔を近づけた。
相手の鼻先に自分の鼻先を付けたまま、閉じられた瞳を…見つめる。
 (…起きなくて…良いの?)
そんな事を思いながら…不二の唇に自分の唇を重ねてみた。
触れるだけ…重ねるだけの 口付け…。
僅かに離して薄っすらと瞳開け、ゆっくりと角度を変えて再び重ねた。
 (ぁ…柔らかい…)
しっとりと吸い付くような感触。
何度かそれを楽しむように繰り返しながら、菊丸は小さく口を開け、赤く薄い舌を不二の口に差し込んだ…。
スルリと滑り込ませた舌は口内を犯すように侵入し、柔肌を擽る様に嘗め回していく。
 (…甘い…。)
馬乗りの格好のまま口付け、菊丸の手は不二の下半身へと忍び寄る…。
手探りで触れた不二の自身。
サワサワとやんわり触れると、軽く握り込んだ。
より深く交わろうと、角度を変え侵入していく舌。
相手の舌を捉え…それにヌルリと絡める。
「…んっ・・・」
不二の喉がなった。
薄っすらと視界を開けると、眉根を寄せている不二の顔。
 (…起きたのかな…?)
思いつつも、菊丸の行為は止まらない…。
握りこみ、ユルユルと上下する菊丸の手の中で、不二の自身が…張り詰めだす…。
「…ぁっ…」
小さく一回身じろいで、不二の瞳が僅かに開けられた。その瞬間…菊丸の手に力が入る。
「ひ…ぁっ…!」
重ねられた唇の隙間をぬって、不二の口から驚きと嬌声の声が零れた。
すっかり立ち上がった不二の自身をシュルシュルと扱きながら、菊丸は瞳閉じて不二の頭を空いている方の手で押さえ込む。
「くっ…ンンッ……」
不二の腕が抵抗の為か菊丸の両肩を押し退けようと暴れ始めた…。全体重を掛け、絶対どくものか…っと押さえ込む菊丸。
僅かに唇が離されたことを利用して、不二は顔を横にずらし、菊丸を横目で睨んだ。
「…どういうつもり…」
怒りも露わのその瞳…しかし菊丸の瞳はうろたえることもせず…まるで他人事の様に不二を見ていた。
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