庭球短編小説

□【恋文】
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悩みに悩んで 選んだ 真っ白な便箋を…

机の上に置いて ゆっくりと眺める



お気に入りの …緩やかに流れる あたたかな曲は

まるで外の寒さなんて感じさせず



漂ってくる甘い香りは カモミールティー



ゆっくりと瞳を閉じて 僕は思い出すんだ…



鮮やかに  …あたたかな …君の笑顔を… 




     恋文




何故真っ白な便箋を選んだかって…?

どうしてだろう…。
…他に選びようが無かった…って言うのが正しいかもしれないね。


僕の気持ちを、彼に伝えようと思えば思うほど…たとえる色を見失っていったんだ。

赤やオレンジ…黄色に 黄緑…

彼に似合いそうな色を思い浮かべては、手にとって…

その色の上に、僕の気持ちを乗せることを考えると
そのまま棚に戻してしまう…の繰り返し。

君に似合うのは、真っ白よりも鮮やかな色だけれど…
そういう色は、僕にはどうも似合わないらしい。

白だったら…彼のカラーを淀ますことなく…すんなりと入っていけるような
そんな気がしたんだ…。





ゆっくりと瞳を開けると、真っ白な便箋が飛び込んでくる。

自分で “書こう” っと思って置いたのだから当たり前なのだけれど
いざ目の前にしてみると、ペンは進まない。



伝えたい気持ちがあった…

書きたい想いがあった…

解ってほしい… 受け入れてほしい… そんな願い…



心に留めて置くなんて、もぅ出来はしない。
うっかり勢いで口走りそうになったことも無くは無い。




でも、そのたびに口を噤んだのは…

受け入れてもらえないかもしれない…っという恐怖よりも

間違った形で、彼の心に届いてしまったら…っという恐れ




言葉は一度口に出してしまえば、取り消すことなんて出来はしない。

言いたかったのはこんなことじゃない…  そう後悔したって遅いんだ…




僕は… どうしても君を手に入れたいわけじゃない…

ただ… 僕の想いがどんなものなのか…知ってほしい

ただそれだけ…




苦しいのは伝えられないからなんだ…

もどかしいのも… いらだつのも  …何も言葉に出来ないからなんだ…



言葉が …体内で渦をまく…




この気持ちを彼に、何故 “今” 伝えたいのか…

多分、もぅ溢れてしまいそうだから… ただそれだけ…


クリスマスに託けて… バレンタインの雰囲気に乗じて… 
そんな時期まで待ってなんていられない…。




ねぇ… なんて書こうか この真っ白な紙に。

僕の気持ちの全てを書き込んだ、この便箋を …彼の視線が通ると思うと
それでけで手は竦む。

でも、書かなくちゃ…

どうしても 伝えたいから…




深く息を吸って、カモミールティーを一口口に含めば…

ほら… 少しだけ、落ち着いてきたよ。





真っ白な便箋に、柔らかな緑色のインクが滑り出す…


こうやってドキドキしながら… 緊張しながら

想いを込めて書いた手紙を  



・・・・・・・彼はいったいどんな所で 読むんだろう…ね。



 *END*






 *あとがき*

皆様こんにちは、だいぶお久しぶりの朱珠です。
自分がサイトの管理人だって忘れていたわけでは無いですよ(断じて!)しかしながら小説のネタが浮かばない…っと、少々サイトをほったらかしてしまっていたわけです。
…久々に書いた小説がこれかよ…っと思われた方…居ますよねぇ…。(ごめんなさい;)
めっちゃ短いです(本当だ;)…でも、ちょっと書きたかったんですよ。こんな真っ直ぐな感じの純粋系…。
皆様は【恋文】なるものを書かれたことはおありでしょうか…?
管理人、お恥ずかしい話、書いたことがないんですねぇ…;
学生時代、こんな感じの体験とかしたかったな〜…なんて書いてみたお話です(話ってほどでもないですが;)こんな短い話ではありますが、皆様の心の中のどこかにちょっとでも引っかかってくれたら嬉しいな…っと思っています。
でわでわ、【恋文】のあとがきはこの辺で…。
ここまで読んでくださった皆様、本当にどうも有難うございました☆

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