キリリク庭球小説

□【My wihs】
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指に絡めた髪が心地良い…
触れる肌が心地良い…

こんなに触れているのに…何で気付いてくれないの…

肌を重ねたいと思っているのは…
俺だけなのかな…

【My wish】

今はリョーマの部屋。
隣で菊丸がくつろぐようにベットにうつ伏せになって漫画を読んでいる。部活の後の、2人の日課。
恋人同士の2人の、何時もの風景…。
大抵2人は部活の後、互いの家のどちらかで過ごす。
たまには公園だったり、ハンバーガーショップだったり、その時々で違うけれど。2人は何時だって一緒だった。

リョーマは菊丸と過ごすこの時間がとても好きだった。
楽しいし、落ち着く…。
時間の流れを穏やかに感じられる…この瞬間…。

“オレと付き合ってよ”…菊丸がリョーマにそう告げたのはもう2ヶ月も前のこと。前から菊丸に想いを寄せていたリョーマにとって、この言葉は何よりも嬉しかった。その場でOKしてしまうほど…。
それからは毎日こんな感じ。2人で過ごす時間を必ず菊丸は作ってくれる…。
だけど…リョーマにはちょっぴり不満があった。
(あんまし我侭言っても、困らせるだけだよね…)

それを思い出す度に、リョーマは自分に言い聞かせる。ベットの下でゲームをしていたリョーマはベットの上に上がり、菊丸の横に寝そべった。
「面白いッスカ?それ…」
黒い瞳で菊丸を覗き込む。 長い睫毛が瞬きで揺れる…。リョーマの言葉に読みかけの漫画から視線を外して、菊丸はこちらを見た。
「うんvv 面白いよ〜」
そして再び視線を戻す。
“ふ〜ん…”リョーマは軽く頷きながら菊丸の髪に指を通す。外に跳ねた、明るい髪…。くるくるとのの字を書くように、菊丸の髪を弄くる。
「オチビィ〜 くすぐったいよ…」
小さく笑いながら菊丸は首を竦めて、やんわりとリョーマの手を退かした。
することのない…リョーマの手…
“チェ…”っと小さく言って、リョーマはその手を菊丸の背中にまわす。横からギュッと抱きしめる格好で菊丸にしがみ付いた。
漫画を見ながら菊丸は苦笑い
「な〜に・・・甘えてんの?」
抱きついてきたリョーマを起き上がりながら軽く解き、菊丸は相手の頭をポンポンと撫でた。
「そろそろ帰んなきゃ。 オチビ、又明日ね。」
時計を見ると、7時半…。
(そんなに遅い時間じゃないのにな…)
思いつつも、そう言われては頷く事しか出来ないよね。
“送ろうか?” 訪ねたリョーマに菊丸は笑って言う。
「オチビに送ってもらったら、帰りが心配で、今度はオレが送っていかなきゃ」
だからいいよ、っと言わんばかりのセリフにリョーマは微笑む。
(でも…もう少し一緒に居たかったかも…)
そう望んでしまうのは…我侭なのかな…。
菊丸の帰った部屋に1人。リョーマはベットに横たわる…。
仄かに残る愛しい人の香り。落ち着くけれど、一瞬淋しくなった…。本体がなくて香りだけだなんて…さっきまで傍に居たから…尚更、かな…。
(菊丸先輩は本当に俺のこと好きなのかな…)
そんなベットに一人横になってると、下らない考えしか浮かんでこない。毎日会って、話して、話して、話して…

話すだけ…?

リョーマの心が求めてる。
もっと触れていたいのだと…。一緒に居られたら、前はそれだけで幸せだったのに…。
2人で過ごす時間があるだけで、どんな神様にでもいいから感謝したかった…。
(でも今は…)
今まで一緒に過ごしていたのに、心に穴が開いてるみたい…。
全然満たされていない自分…苛々する。
せめて口付けだけでもしてくれたら…。
そう思ってしまうのは我侭かな。
(したかったらするだろうし…)
リョーマは天井見上げため息吐いた。菊丸がそれを望んでいないのなら意味が無い。望まれたいから苛々する。
こんなに想っているのは自分だけだと言われているようで…。それがちょっぴり悲しかった。

何時も道理の部活の後。今日は公園で楽しくお喋り…。しているのは菊丸だけ…。
リョーマはボンヤリと菊丸の笑顔を見ながら、彼の話しにあいづちをうつ。
(大体菊丸先輩って、俺の何所が気に入ってあんな事言ったんだ…)
最近思うのはこんな事ばかり。
(聞いてみようかな…)
っと見上げた瞳が、笑顔の菊丸の視線とぶつかる。
「どうしたの〜オチビ。そんな顔して…何か悩み事?」
リョーマの不安げな眼差しに、菊丸の表情は一瞬にして心配そうなものへと変わった。そっと伸ばされた菊丸の手が、リョーマの髪を撫でる。
「言ってみなきゃ、何かあるんだよね…」
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