キリリク庭球小説

□【A daling person】
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カチッ…  カチッ…  カチッ…  カチッ…

時計の針が昼休みを連れて来る

窓から降り注ぐ 暖かい初夏の日差し…

今日も来るのかな…   あの人は・・・


A darling person



聞きなれた鐘が鳴り、昼休みが始まる。

3分もしないうちに、自分の名を呼ぶ声が聞こえた。

「越前・・・」

(今日はやけに早いな・・・)

誰かだなんて見なくても解る・・・。
何時もの光景・・・そこに立っているのは不二周助・・・

(俺の恋人・・・)

付き合ってくれと言われたのはつい先月
頷いたのは自分。・・・始まった2人の関係・・・。

それから不二は昼休には必ずリョーマの教室に訪ねて来る。
片手に弁当箱を持ち “一緒に食べようか” っと

リョーマの目の前に座っている奴が当たり前様に席を空ける。
不二は微笑み手を振って何時もと同じセリフを言う。

「何時もごめんね。」

そいつは小さく会釈なんかしながら “イイエ…” なんて言うんだ。

これもお決まり・・・。

「今日も一緒に食べよう、ね。」

目の前で微笑む不二を見てリョーマは不思議で仕方なかった。
付き合っていることは勿論皆には内緒って約束。
知ってるのは菊丸だけ。

不二がどうしても菊丸だけには話しておきたいって言うもんだから・・・
しょうがないかなって・・・少し思って・・・“イイッスヨ・・・”って答たリョーマ。

確かに口外してはいないけど、1年の教室に毎日訪ねて来る自分・・・おかしいって思わないのかな。
リョーマは不二の顔をジッと見る。

(居ずらくないのかな・・・)

確かに昼休みの度にどこかで待ち合わせるよりは自分にとってはらくだけど
3年が1年の教室に殆ど毎日来てるって可笑しくないか?
リョーマの瞳が不思議そうに不二を映している。

「どうしたの・・・食べないのかい?」

ボーっとしている間に机の上に出しっぱなしになっていた弁当箱は不二の手によって開けられて
食べやすいようように、箸まで出された状態でリョーマの目の前に出されていた。

それに気付いたリョーマは “どもッス…” っと小さく言い箸を取った。

「どういたしまして・・・」

微笑んで、小首を傾けた不二のサラサラの髪が揺れた。

その手触りをを知ってる自分・・・。なんだか少し恥ずかしい・・・。

「今日も来てるね不二先輩vv」
「本当だ♪私このクラスで良かった〜v」

不意に聞こえてきたクラスの女子の話し声・・・
リョーマは弁当に箸をつけながら聞いている。

(不二先輩・・・人気あるんだよね・・・・)

チロリと上目使いで不二を見る。

「何?・・・どうかした?」

笑顔で聞かれても困る・・・。
(聞ける訳無いじゃん・・・こんな事・・・・)

「別に・・・。なんでもないッス・・・」

“そうッ?” っと微笑んだ不二の手がそっとリョーマの頬に伸ばされた
目をパチクリしてソレを見ているリョーマ。
指先がほんの僅かに唇に触れた。

「ぇ・・・!?」



「ご飯粒、ついてるよ」

クスッっと小さく笑って手を戻す不二。
リョーマの背後で、女子の黄色い声が上がる。

恥ずかしくて紅潮していく頬。
(これじゃ、付き合ってるってばればれじゃん!)

「どーしたの?そんな可愛い顔して」

楽しそうに微笑む不二にリョーマはちょっと不貞腐れた表情で立ち上がり
不二の手を掴んで歩き出した。

「ぇ・・・ちょっと、越前!?」

少々面食らった様子で手を引かれリョーマの後ろをついていく不二。
その表情は苦笑い・・・。

(少しやりすぎちゃったかな・・・)

屋上の重たい鉄の扉を閉め、周りに人が居ないことを確認してリョーマは振り返り口を開けた。

「あんなことしたらばれるじゃないッスカ!」

赤くなった頬が不二の瞳には堪らなく愛しく見える。

「御免ね・・・。だって余りにも越前が可愛かったからつい、ね。」

クスクスッと笑いながら答える不二にリョーマは更に不機嫌そうな顔で言う。

「今度あんなことしたら・・・暫く一緒に弁当食べないッスヨ。」

“ヤレヤレッ・・” っといった表情で不二は小さく溜息をつきリョーマを見て“解った” っと答えた。

「なら・・・いいッス・・・」

僅かに視線を下げたリョーマに、不二は苦笑した。
怪訝そうな瞳で不二を見るリョーマ。

「何ッスカ・・・?」

その声が怒っている。
不二は苦笑したまま“御免、御免・・・”っと謝りつつ言葉を続けた。

「でもさ、僕達ここに来るまでずっと手、繋いで来ちゃたじゃない。皆の目にはどう映ったんだろう・・・」

相変わらず笑っている不二の言葉にリョーマは慌てて自分の手を見る。
しっかりと握られたままの不二の手。
(ヤバッ・・・このまま来ちゃったんだ・・・・)

「きっと今頃女の子達は噂してるね・・・僕達のこと。」

微笑みながら言う不二にリョーマはしょげた様に手を離し俯いた。

「最低・・・・」

不二は微笑む。

「イイじゃない、噂になっても気にしない 気にしない。」

そんな不二を見上げリョーマは不思議そうに尋ねた。

「不二先輩は恥ずかしくないンッスカ・・・・?」

その言葉に一瞬驚いた様に不二は笑いを止めリョーマを見た。
そして微笑み口を開く。

「恥ずかしいわけ無いじゃない。」

その言葉が余りにも真っ直ぐ過ぎて、リョーマは少し戸惑った。

「越前と付き合ってること、恥ずかしいなんて思わないよ。僕の好きになった人だもの、自慢したいくらい。」

微笑んだまま、真っ直ぐに自分を見ている不二。
リョーマの胸はほんの少しチクリと痛んだ。
自分を好きだと言ってくれた不二を嬉しく感じていたのにどうして恥ずかしいなんて思って仕舞うんだろう。
自分も不二を好きだと思っているのに  どうして恥ずかしく感じてしまうんだろう・・・。
(でも・・・恥ずかしいもんは 恥ずかしい・・・・)

「噂になっても・・・認めちゃ駄目ッスカラネ・・・」

可愛く唇突き出し、ちょっと照れた様子で言うリョーマに不二は柔らかに笑い小首を傾げる。

「どうしても?」

「どうしてもッス・・・でも・・・・」

言いかけた言葉を一瞬飲み込みリョーマは視線を上げ不二を見た
その瞳が僅かに揺れる。

「・・ちゃんと・・・・・・。俺ちゃんと・・・不二先輩の事好きだから・・・」

いい終えてプイッっとソッポを向いたリョーマに不二は口元を緩ませた。
照れた様子で背を向ける恋人を思わず不二は抱きしめる。



「そっか・・・それなら内緒でも、我慢しようかな。」



初めて言葉で相手の気持ちを聞いた不二 その表情はとても嬉しそうだった。
暖かい空気に包まれた2人。

不二は背中から抱きしめたまま、リョーマの頬にチュっと軽く口付けた。

「なっ・・・///!」

片手で頬を押さえ慌てて振り返るリョーマ。

「誰も居ないし、これくらいは許されるよね。」

微笑む恋人には敵わない。
リョーマは小さく溜息をつき、赤くなった顔を隠すように顔を背けながら “今日だけね・・・” っと呟いた。




穏やかな日に起こったこんな事
皆には内緒だよ
恥ずかしいのもあるけれど
勿体無いから教えたくない・・・そんな気持ちもあるなんて言ったら図に乗るから
だから言わないこれは秘密




リョーマは小さく微笑んだ。

「早く帰らないとお弁当食べる時間なくなっちゃうね。」

微笑んだ不二に頷くリョーマ。




明日は屋上で食べるのも悪くないかもしれないね。






*END*





 *あとがき*

PCサイトになってからの初リク小説です♪1000番踏んで下さったシルナさん
リク有難う御座いました☆《不二リョ・周りも見えないほどのネコっ可愛がりな状態での甘系・・・》っとリクを頂いたのですが、いかがでしたでしょうか・・・。
これではただの甘系じゃん?っと自分で突っ込みつつ、何度か書き直してはみたのですが、この辺が朱珠の限界の様です(トホホ;)コレが最終形態となりました(汗;)甘いお話は難しいですね。
でも、書いていてとても楽しかったので(恥らってるリョーマ君とか/笑)リク頂けて嬉しかったです。
こんな小説でも、受け取っていただけたら幸いです;
これからも日々精進致しますのでこの辺でお許し下さい。でわでわ…☆

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