キリリク庭球小説

□【Date weather】
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                                軽快なボールを打つ音がテニスコートから響いてくる

                                穏やかな日差しが体を包み込む感覚

                                暖かな  ・・・でも、なんだか爽やかな風が髪を巻き上げ

                                肌を纏う汗さえ清々しい


                                ねぇ・・・  こんな日はデートにでも行きたいよね・・・



                                Date weather

                                

                                「後8週・・・ペース上げて・・・・」

                                ストップウォッチから視線を上げた乾の声がフェンス横で響き渡る。

                                他の部員達がコート内での練習をしているこの時間、レギュラーメンバーは
                                ロードワークに汗を流していた。

                                後8週・・・  ロードワークも半ばを過ぎ、段々と辛くなってくる辺り。
                                何か楽しい事でも考えよう・・・
                                不二はそう思い隣を走るリョーマにチラッと視線を向けた。

                                そんな不二の様子に気付いた様子も無く、リョーマは淡々と走る。

                                ソレを見て不二は微笑む。
                                   (リョーマって練習中、本当表情変わらないな・・・・)

                                楽しそうに微笑み浮かべ走る不二。
                                自分こそ辛くはないのか・・・っと、きっと皆が突っ込み入れたいはず。

                                そんな爽やかな笑顔で走る不二は、リョーマに向けていた視線戻し
                                澄み切った空を見つめた。
                                   (こんないい天気の土曜日に、デートに誘わなかったら勿体無いよね・・・)




                                今日は土曜日。学校は休みだから部活は午前中で終了

                                恋人であるリョーマを誘わずには勿体無いいい天気

                                太陽は、遊びに行けとばかりに輝いていた





                                走るペースはそのままに、不二は思考を巡らせる。





                                この前の部活の後のデートはハンバーガーショップに行ったっけ・・・。

                                思い出しながら不二はクスッと笑った。

                                
                                「あ〜周助・・・。それ新作のシェイクでしょ・・・」

                                ちょっと頬を膨らましたリョーマが上目ずかいで不二をみている。
                                不二は小首傾げてリョーマを見つめ『そうだけど』っと普通に答えた。

                                「それ、甘さ控えめって出てたから俺も飲んでみたかたのに・・・」

                                自分の持っているジュースのストローを弄りながら言うリョーマ。
                                ちょっとフテッた表情に不二は苦笑い。

                                「でも、リョーマが何時もと同じで良いって言ったんだよ。」
                                「そうだけど・・・ 新作がもう出てるって知らなかったし・・・・」

                                不二は微笑みリョーマの前にカップを差し出し

                                「仕方ないな・・・ 飲みかけだけどいい?」
                                「うんっ」

                                フテッていた顔を笑顔に変えてリョーマがソレを受け取る。
                                ストローに口をつけ、飲んでいるリョーマを笑顔で見つめる不二。

                                「どう?・・・結構美味しいよね。」
                                「・・・うん。あんまり甘くないし、冷たくて美味しい。」

                                笑顔でリョーマは答えると、再びストローを銜えた。
                                フフッと小さく笑った不二が言う。

                                「ねぇ、・・・関節キスだね。」

                                
                                その後リョーマが咽こんだのは言うまでも無い。
                                   (真っ赤な顔して怒っちゃって・・・可愛かったな・・・
                                                  誰かに聞かれたって別に良いのに・・)

                                どうして君は隠したがるのかな・・・不二は思う。
                                   (そんな所も・・好きなんだけどね)

                                その間のデートは・・・  そうだゲームセンターだったかな・・・


                                「ねぇ、リョーマ・・・もう4回目だよ・・・・」

                                UFOキャッチャーの前で猫のぬいぐるみを狙っているリョーマ。
                                でも、惜しい所で何時もソレは落ちていく。

                                「もう一回・・・・」

                                普段小生意気な顔するくせに負けん気だけは強くって
                                   (リョーマもまだまだだね・・・・)

                                可愛い恋人の口調を心の中で真似て不二は微笑む。

                                「あ〜ぁっ!クソッ・・・」

                                4回目のチャレンジが失敗に終わって、悔しそうにガラスを叩いたリョーマ。
                                唇尖らしむくれた顔して・・・
                                横で笑った不二に気がつき、リョーマは挑発的な瞳を相手に向けた。

                                「今笑ったってことは、周助にとってはこんなの簡単ってことだよね」

                                生意気な口きいてる時が生き生きした顔してるって
                                   (君は気づいてないのかな・・・)

                                微笑む不二の手を引っ張り台の前に連れて来て
                                リョーマはニヤッと笑って見つめる。

                                「笑うんだったら取ってみてよ。」

                                ヤレヤレっと小さく溜息吐いた不二。
                                財布から小銭取り出しリョーマを見て

                                「一回で取ったらご褒美、ね。」

                                取れるわけないじゃん・・・ リョーマの瞳が余裕有り気にキラッと輝く。

                                「無理っすよ・・・」
                                「どうかな?」

                                チャリンとコインを入れた不二が微笑んだ。

                                「一回で取れたら、今日の帰りは手・・・繋いでね。」

                                振り返った不二がニッコリ笑った。


                                結構簡単に取れちゃったんだよね・・・。
                                薄っすらと額に浮かぶ汗を手の甲で拭って不二は微笑む。
                                   (取れた時の君の顔ったら・・・)

                                嬉しそうに笑ったくせに、直ぐにプイッと横向いて
                                『周助が勝手に言っただけじゃん・・・俺いいって言ってないし・・・』
                                なんて言っていた。

                                そんな時は素直じゃないよね。
                                でも、知ってるよそんな態度とってても、ちゃんと約束は守るんだよね。

                                恥ずかしそうに繋いだ手に、ちょっと俯き加減のリョーマ
                                『絶対真っ直ぐ帰る・・・』
                                なんて悔しそうに言いながら
                                   (でも、僕は見逃さなかったよ。繋いだ瞬間の
                                                 一瞬嬉しそうに笑った君の笑顔・・・)



                 
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