キリリク庭球小説

□【金魚すくい】
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夕陽がかげり  祭囃子が楽しく聞こえてくる神社の境内



浴衣を着た人  綿飴を持った女の子  友達同士ではしゃいでる奴ら



賑やかで・・・   華やかで・・・   見ているだけで・・・



何だかワクワクする




金魚すくい






夏休みも半ばに差し掛かり
今日は祭りに出向いてみたリョーマ


一人キョロキョロと辺りを見回しまるで誰かを探しているかのよう・・・


リョーマは少し汗ばんだ額に張り付く前髪を軽く書き上げ
ゆっくりと進めていた足を止めてみた。




「桃先輩達・・何所行ったんだろう・・・」




部活終了後、祭りに誘われたリョーマ

夕方に神社の前のコンビニで待ち合わせ
桃城、堀尾、カチロー、カツオの5人で、さっきまで一緒に祭りを回っていた筈なのに

気付くと一人取り残されるようにはぐれていた



「だいたい皆はしゃぎ過ぎ・・・歩くの早いし・・・」



前髪を掻き上げた手で そのまま頭を軽く掻き
リョーマは呟くようにぼやいた


ひしめくように屋台の並ぶ境内
通路に取り残されるようにぽつんと立ち尽くすリョーマ



「まっ、いっか・・・」



行きかう楽しげな人々を見てリョーマは呟き
一人祭り見物を決め込む事にした



(フラフラしてたら会えるかもしれないし・・・この人込みの中探すのは馬鹿らしい・・・)



リョーマの足が再び歩き出す

行く当てもなく・・・  でも少しだけ楽しそうに・・・



海外生活の長かったリョーマにとって、日本の祭りは少々珍しいものだった

日本独特の雰囲気に包まれるそれは
少しだけワクワクする・・・そんな感じ・・・



人のざわめく声に混じり
リョーマの耳に水音が届いた


“何所から?” っとでもいう様に、リョーマはキョロっと辺りを見回す

チョロチョロと聞こえてきた水音は
水色の小さな四角いプール


中には赤や黒の金魚たちが涼しげに泳いでいた


(金魚すくい・・・?)


リョーマは少し惹かれるように傍へと歩み寄る
金魚を見ながら歩いていたリョーマは、しゃがみ込んで懸命に金魚を追っている人物にコツンとぶつかった


「あっ・・・すんません・・・」


その人物に目を向けると・・・見たことのある顔・・・

(誰だっけ・・・・?)


まぁ、いいやっ・・・っとばかりにリョーマもしゃがみ込み
金魚を覗き込む


「おぃし〜ぃ・・・おじさん見た見た?今の!!」


何だか賑やかな雰囲気をかもし出す少年に
リョーマは煩いな・・・とばかりに視線を向ける


「ヨッシ!・・・これで6匹目ねvv」


薄茶色のふわふわな髪を揺らして喜ぶ少年・・・

(あっ・・・不二先輩と試合した人だ・・・)



ジッ・・・ッとみていたリョーマの視線に気付いた様に
少年はリョーマの顔を見て小首傾げた


「越前リョーマ?」


まるでインコが首を傾げている様で・・・すこしだけ人なつっこい笑顔・・・

「こんばんわッス・・・」


一応相手が年上なのは知っていたので
軽く挨拶しながら頷くリョーマ


手元のおわんに視線を向けると
少年のおわんには赤い金魚が6匹ほど泳いでいた


「へぇ〜・・・結構上手いんッスネ・・・」


リョーマがそういうと人なつっこい顔が満面の笑みに変わる

「だろだろ?・・・俺ってば金魚すくい上手いんだよね」

自分で言うかな・・・っというセリフを吐きながら
小銭をポケットから取り出しながらおじさんに手渡した

「おじさん、こいつにも1つね」

“はいよ・・・”っと笑顔でそれを受け取り、おじさんはリョーマに薄い紙をはった針金を手渡した

「頑張ってね。」

「えっ・・・コレ・・・」

リョーマは手渡されたまま少々驚いた様に少年を見る

「あぁ、奢りね。その代り一緒に金魚すくいやってよ」

視線は金魚を追ったまま
少年は楽しそうに言う


「・・・・。」


それに、ちょっと仕方無さそうにリョーマは頷きながら
金魚をすくう事にした


「金魚すくいのコツはね、手首と集中力!」


尋ねた訳でもないのに少年は言いながらヒョイっと7匹目の金魚をおわんに入れた。


「オイオイ・・・商売上がったりだな・・・」


苦笑いするおじさんに少年はニッと笑って袖をまくった





*





「結構上手いんじゃん」

リョーマの手にぶら下がる金魚の入ったビニール袋を眺めて少年は笑った

「まぁね。」

少し嬉しそうにリョーマは笑う

「でもさでもさ、俺のは赤ばっかり・・・越前君のは黒いのも居ていいなぁ〜」

リョーマは暫し考えて少年を見上げた

「いる?」

キョトンとした顔で少年はリョーマを見る

「・・・良いの?」

「もともとあんたが金出してくれた訳だし・・・」

ボソッとリョーマが言い終らない内に
少年はリョーマの両手を握りブンブンと振って嬉しそうに笑った

「マジマジ!?本当いいの?・・・凄っげ〜嬉しいんだけど。」



「全部上げるし・・・」



「嘘!?でもそれは悪いよ〜」

欲しそうな顔をしながらも、それでも全部は不味いでしょうッとばかりに苦笑い

「イイッスヨ・・・家猫いるし・・・危ないから。」


リョーマがビニール袋を差し出すと
少年は嬉しそうにそれを受け取りペコッっと頭を下げた


「無理やり付き合せちゃったのに・・・サンキュー」


御日様みたいな笑顔が微妙に苦笑いに変わった

「本当はさ、跡部達と来てたんだけど・・・俺金魚すくい始めると長いから皆他行っちゃったんだよね」

鼻の頭をポリポリッと掻きながら
少年はリョーマを見つめる

「だから付き合ってくれて本当嬉しかった・・・今度家に見に来てよ。」

社交辞令の様に聞こえるその言葉に
リョーマは小さく笑って


「家知らないし・・・あんたが迎えに来てくれたらね・・・」


と答えた。



「お〜ぃ、ジロ〜・・・」


祭囃子にのって聞こえてきたその声は
その少年を呼んでいるらしく・・・少年は有難うッといって皆の所に帰っていった


大きく手を振りながら“またね”っと言って・・・



笑ったままリョーマも手を振る


「ジローって名前なんだ・・・・」

今更ながらに知った名前を口に出し、リョーマはクスッと笑ってみた。
もう会うことなんてそうそうないけど・・・さっきはちょっと楽しかったから・・・






「あ〜リョーマ君こんな所にいたぁ〜」



不意に聞こえてきたカチローの声

リョーマは振り返り皆を見る


「何処行ってたんッスカ?」

尋ねたリョーマに桃城がたこ焼きを食べながら苦笑い


その後リョーマたちは普通に祭り見物をして帰っていった。











楽しかった祭りの次の日

リョーマの元にジローが行ったのは言うまでも無い

金魚を見に家に来ませんか?っと誘う前に『友達になろう』っと申し込んだらしい


夏休みに出来た新しい友達・・・



まぁ、この後2人が付き合う事になるだなんて・・・




この時は誰も想像なんて出来なかったけどネ。






*END*





 *あとがき*
夏です祭りです・・・ってなわけで皆様こんにちは朱珠で御座います☆(意味不明;)
今回の小説【金魚すくい】タダ吉様からのリクでした☆
ジロリョ・・・っとCPのみのリクだったので、管理人好き勝手に書いてしまいました(大丈夫かよ;)
夏といえばお祭り・・・他校生と出会うチャンスです(違っ!)
金魚すくいと、ジロー君のイメージが合ってしまった管理人・・・これは書くしかないでしょう・・・っと(苦笑)書き上がって思ったのは今までとお話の感じが随分違うな・・・って(ぉぃ)管理人の書く小説にしては珍しく“出会い”が話しのメインにきてます(苦笑
良かったのかなこんなんで・・・
本当は結構迷ったんですよ。書いたことの無いCPだけに、付き合っててラブラブの2人にしようかな・・・とか、他サイトでは余り見られないシリアスなジロー君を書いてみようかな・・・とか(言い訳かよ;)妄想は広がるばかり・・・あえてこの路線を選んだのは、ジロー君とリョーマ君の接点がちょっと無かった様に感じたもので・・・それなら書いてしまおう・・・みたいな(ぉぃ)
こんな出会いで付き合いだしても面白いかな・・・なんて思いながら書きました。
タダ吉様、リクして頂き本当に有難う御座いましたです☆
拙い小説では有りますが頑張って書きましたゆえ、貰ってくださると嬉しいです。
でわでわ、ここまで読んでくださった皆様、本当に有難う御座いました☆
これを読んで、がっかりした方が居ないことを、管理人はひたすら祈る事にします;

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