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□くちづけ
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目に眩しさを覚え、ゆっくりと重い瞼を上げると、一番はじめに目に入って来たのはアキラをじっと見つめているシキの姿だった。

「起きたか…。」

切れ目で整った顔。
妖しげな雰囲気が出ているのはシキの瞳のせいだろう。
燃えるような真紅の瞳は獰猛な獣を思わせるが、
時によってそれが様々な色を映す事は今は知っている。
今、アキラを見つめる眼差しはとても柔らかく、その空気にいたたまれなくなり、少し顔を赤らめてシキから視線をそらした。

ふと机の上を見てみると、コップひとつ置いていない事に気付いた。

「朝食…まだ食べて無いんだろ。今作るからちょっとまってろ……って…うわっ!」

そう言ってベッドから降りようとした瞬間、いつの間にか乗り上げてきていたシキの腕が背後からまわり、身体を抱きしめられた。

心臓が大きく跳ねる。シキの行動には驚かされてばかりだ。
密着する身体から感じる体温は熱く、規則正しい鼓動の音を聴くと安心して溜め息が出てしまう。

自分より身長が少し高いだけの筈なのに、見た目より筋肉質なシキの身体にアキラはすっぽりと収まっていた。
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