書斎
□ポッキー日和
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先ずは曽芭から。
「ねぇねぇ、曽良君。知ってる?今日はぽっきいあんどぷりっつの日なんだって」
「…貴方がどこからその情報を知り得たのか聞きませんが、僕達の時代にそんな物がある訳ないでしょう」
「そんな硬いこと言わずにさぁ…ほら、口開けて」
「大体、芭蕉さんはいつも落ち着きが…もがっ…」
「ドゥ、曽良君?美味しい?」
「……明日、猫車の態勢で次の宿場まで行くのと、今すぐ断罪されるのと、どちらが良いですか?」
「なんで怒ってんの?曽良君、甘い物好きでしょ」
「だからと言っていきなり口の中に突っ込むのは、感心しません。喉に詰まらせたらどうするんですか?」
「うぅ、ごめん…」
「全く……芭蕉さん、仕返ししてやりますから、口開けなさい」
「え?」
「良いから、早く」
「分かったよ……!?…」
「このちょこれいととか、いう物の甘さは独特ですね。僕には合いません」
「き、君…今、接……」
「何、ジジイが顔赤くしてんですか?気持ち悪い」
「気持ち悪いって…赤くさせたのは、君だろ!」
「たかが接吻くらいで、生娘みたいに恥じらわないで下さい。やりにくいんですよ」
「曽良君みたいに若い子には分かんないかもしれないけどさ、私くらいの歳になると接吻するのだって胸がバクバクになっちゃうもんなの!」
「あぁ、動悸ですか?更年期ですね」
「違わい!もっと、こう…ときめきみたいな感じで」
「寒いこと言ってないで早く行きますよ、芭蕉さん」
「ちょっと待って。置いてかんといて!」
「……………」
「あれ、曽良君。顔赤い…熱でもあるの?」
「ありませんよ。ちょっと質の悪い病にかかっているだけです」
「大変じゃない!早く宿で休まなきゃ!荷物持とうか?」
「芭蕉さんの枯れ木みたいな身体で荷物二つも持てる訳ないでしょう。このくらい、平気です」
「…無理しないでね?」
嗚呼、甘ったるい。
胸やけがしそうだ。
貴方の方がちょこれいと等より、余程甘味。
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