書斎
□聖夜に小さな幸せを
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「めりーくるしみます、妹子!」
「それを言うならメリークリスマスだろうが、苦しんでどうする!?」
開口一番、馬鹿なことを口にした馬鹿太子に真っ当なツッコミをする律儀な僕。
はい、クリスマスにも関わらず仕事中ですよ?
クリスマス?なにそれ美味しいんですか?
大体、僕らの生きている飛鳥時代にクリスマスなんて舶来の文化が伝わっている筈ないのだが。
でも太子が棒をなくした際の話に、ツリーのてっぺんに飾ったとか言ってたし、実際の歴史とは異なります、と言うことで。
手がかじかんでまともに筆すら握れない寒さの中、書類整理なんてふざけた話だ。
まぁ、この寒さにも関わらず、隣の阿呆は元気そうだけど。
というか、僕が真面目に仕事してるのに、その横で鼻歌歌いながら輪飾り作ってんじゃねぇよ!
お誕生日会か?
口に出来ないツッコミが頭の中をグルグルと回って、余計に仕事が手につかなくなる。
もういいや、休憩しよう。
僕は諦めて筆を硯に置いた。
それを待ち構えていたかのように、太子から声が掛かる。
「なぁ、妹子。今夜暇か?」
ワクワクとまるで子供のように表情を輝かせて聞いてくる。
暇かと言われたら、悲しい哉、暇の一言に尽きる。
一人暮らしだし、彼女も居ないし…。
「暇ですよ、残念なことに」
「残念がるなよ、私が遊びに行ってやるから!」
一緒にケーキ食べて、トランプするぞ!
なんて、ニコニコしながら言うものだから、僕も苦笑して頷いた。
僕らは仏教徒でキリストの誕生日を祝う義理もないけれど、大切な人と共に過ごせる口実になるなら構わない。
なんて罰当たりかな?
「太子、寒いんでしょう?鼻と頬っぺた真っ赤になってますよ?」
そっと手を伸ばして触れれば、案の定、氷のように冷たい。
痩せてるから寒さに弱いんだろう。
「う〜ん、でも前に富士山に登ったときに比べれば寒くないぞ?」
あのとき結局、太子は山頂まで行けなかったんだっけ。
思い返しながら、真っ赤になった頬を手の平で包み込む。
「いい加減、ジャージはやめたらどうですか?流石に馬鹿でも風邪引きますよ?」
「遠回しに馬鹿って言うな、このお芋め!…私はこの格好が好きなんだよ」
だって、寒いって言ったらお前が暖めてくれるだろ?
なんて、凄い殺し文句。
あぁ、もぅ。これだからこのオッサンは。
「早く仕事終わらせて帰りましょう」
蝋燭に火を付けて、手料理でささやかなパーティーをして。
そんな小さな幸せを噛み締められる今が、僕はとても尊く思えた。
全ての人に等しく幸せが降り注ぎますように、
HAPPY Merry X'mas!
後書き
まさかの一ページクオリティー。
最近更新してなかったので、クリスマスだけでも記念にと…。
己の技量も弁えず浅はかだったと思います…orz
正月までに何本か作品上げれたらいいなぁ、と目論んでいますが果たしてどうなるやら。
それでは、HAPPY X'mas!
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