スローライフをご一緒に
□4:優しいママさん
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平介に手をひかれるまま階段をおりてリビングへ足を進めれば、優雅にソファに腰をおろして紅茶を啜る平介のお母さん。
はじめまして と言ったけど緊張で声が少し裏返ってしまった。平介のお母さんは一瞬驚いていたけれど、優しく微笑んで、はじめまして、と返してくれた。
『母さん、この子家ないからここに住ましていいですか?』
さらっと言う平介に私はおちつけない。お母さんがダメ と言えば私は拠り所を無くしてしまう。そんな不安を抱えていれば、きゅっと繋がれた左手に力が込められた。まるで、大丈夫だ と言っているように。
「住ましてあげるのはいいわよ、でもどうして家がないの?」
『トリップしてきた…みたいな?』
信じてもらえるはずのない言葉を平介はすんなりと言ってしまう。そして「あら、そうなの」と頬に手を添えて信じてしまう、お母さんにも驚いた。
「あ…あのっ!お金はバイトして少しづつですが必ず返していきます…っ!だから私をもとの世界に戻るまで置いてください…っ!」
頭を下げてお願いする。するとお母さんは「顔をあげてちょうだい」と優しい声色で言ったので言うとうりにした。
「お金なんていらないわ。そんなことより今はゆっくりしなさい。混乱してるでしょうけど、一度じっくり考えておちつくのが一番よ。戻れるまでのんびりこの家で過ごすといいわ」
この家の人達は温かい人で溢れているようだ。涙がこらえきれず、ぽたぽたとこぼれてしまう。そんな私にお母さんは、優しく笑って、平介は『泣き虫だなー』なんて頭を撫でるのだった。
ーお世話になりますー
(***です!家事は任せてくださいっ)
(あらあら、頼もしいわ。よろしくね***ちゃん)
((***ー二階行くよ〜))