短編
□見つけてよ!
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今日は生憎の雨。あったはずの予定は相手の都合によりなくなってしまった。
その予定とは十一時に公園で待ち合わせをしてそのままショッピングデートというもので、それをキャンセルされたのは十時半過ぎ。
お洒落な彼を立てるために普段より可愛く着飾って来たと言うのに、あの男はドタキャンした。
ごめんね!今日行けなくなったー!だなんて、軽く送られてきたメッセージに眉が下がる。
予定時間よりも少し早いけれど待ち合わせ場所である公園でいた私は空を見る。
さしてある透明のビニール傘から見える空は雲に包まれていて、ぱらぱらと降る雨粒を見て溜息が溢れた。
帰ろう、と足を前へと進めれば前の方から傘をささずに走ってくる人が居て。
パシャパシャと水溜りなんて気にせず駆け寄ってくる人は今日デートする約束をしていた人。
「トド松??!」
なんで、と声にしようとすれば鈍く伝わる振動と包容。濡れてしまわないようにと差し出した傘を落としそうになる。
呆気にとられる私はただただ動揺するだけで、抱きしめてくる彼は走って荒くなった息を整えるように深く息をする。
「今日は遊ばないんじゃないの?」
彼の背をトントンと優しくあやす様に叩きながら問えば、勢いよく彼はこちらを見た。
「遊ぶよ!!!」
「?!だって遊べないって!!」
「あれ送ったのはおそ松兄さん!!!勝手に送っててさ、ほんとにごめん」
そういう事か。なんとなく納得した。普段マメなトド松が女の子との約束をこんな雑には断らないと思っていた。
あんなメッセージが来た時にはとうとう嫌われてしまったのかと胸が痛くなった。
「よかった」
自然と緩む頬に比例して涙が出そうになった。
「第一さぁ、ボクが女の子…ましてや好きな子とのデートをすっぽかすと思う?」
名無しさんはまだまだ分かってないなぁ
拗ねるように口を尖らせて彼が紡ぐ言葉に目が真ん丸になる。
「え?好きな子??」
「そーお!好きな子!そろそろ気づいてよね!鈍感も程々にしてくんない?」
ー真っ赤になったほっぺたにー
(うそっ!知らなかった!!)
(バーカ!!)