スローライフをご一緒に

□2:ひとまずお茶でも
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トリップだなんて信じられない。これからの事ばかり頭が考えてしまう。唯一手に握っていた携帯を家族や友達にかけてみようと試みるが電波が通っていない、現在使われておりません と。


「ど…っ、どうしようっ!」


家族も友人にも繋がらない携帯を握り締めて考える。これからどうやって生きればいい?知人が一人も居ない他人ばかりの世界で私はどうすれば…っ


『おちつきましょうや、とりあえずお茶でも、どーすか?』


ふわりと抱きしめられて、暖かく大きな身体が私を包み込む。視界が彼の胸いっぱいになる。やんわりと頭を撫でてくる優しい手のひらに心がおちつく。目の奥が先程よりも熱くなって涙が流れそうになるのを必死に堪えて、彼の気の抜けた言葉に縦にうなずく。


そうすると彼は私から離れて、部屋を出る。とんとん と階段を降りる音がしたからきっとここは二階なんだろうな、なんて考えていると、また階段を上る足音がして小さな音をたてて彼が扉を開く。


部屋に入ってきた彼と目があい、微笑まれる。優しい笑顔だな なんて思っていれば差し出されてマグカップ。


礼を言って受け取ればほんのり香るミルクの匂い。温かいミルクを一口飲んで、ほっと息をつく。おちつくね なんて笑えば彼は一瞬目を見開き、次いでへらりと笑って頭を撫でてくれた。


ー掌から伝わる彼の体温ー


(えへへ、あったかいね)


((ん〜、あ、名前は?俺、平介ね))

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