君に出逢った瞬間に

□5:だめだから
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頭の中の彼は私を呼び続けた。その声は日に日に大きくなる。辛くて辛くてたまらない。そんな彼。


今日もピエロの彼は私を抱きしめて眠る。仕事帰りで疲れたのか今日はぐっすりだ。

今日なら と緩んだ腕からこっそり出て、靴を履いて外へ出る。深夜、人は少ない。どこで彼は呼んでるのだろう、


足が勝手に進んだ。走って走って、ある大きな木が見えてきた。息を切らしながら、根本に近づく。


そこには遠くて見えずらいが男らしき人が座りこんでいた。もしかしてあの彼かも、しれない と駆け寄ろうとすれば、訪れた浮遊感。


「な、に、!?」


ふとそれを見れば、いつものピエロメイクではない、私の主様。息を切らしているようだ。


『帰るよ◆』


そう言われて私は抵抗する。あの木の彼は私を呼んでる彼。やっと見つけたのに、


「やっ、離して…っ!会いに行かなきゃ!あの人に…っんんっ」


キスをされて唇を塞がれる。木の下の彼がこちらを見た気がした。だけどヒソカさんがとてつもない速さで家に戻るものだから、彼の顔が見えなかった。


ガチャン 玄関の扉がしまる。私はベッドに押し倒されていた。目の前には天井とヒソカさん。


『なんで***は…。僕は君の飼い主だ、ペットが勝手に居なくなっちゃだめだろ?』


「ご、めん なさ、い」


いつもの笑った顔じゃなくて、感情のない顔。怖くて、謝ることもままならない。


「でも、私はペットじゃ…ない。あの人が呼んでるの…」


だから、行く と言おうとすれば頬に冷たい雫が落ちてきた。


ー泣いてるの?ー


(私は人間なのに)

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