短編
□あいつの彼女
1ページ/1ページ
あ、どもー。俺、松野家の長男!松野おそ松でーす。今回はさ、最近付き合う事になったと言う十四松と彼女こと、名無しさんとのデートを尾行したいと思いマース!
てか、尾行中なわけなんだけど、現在夕方の四時ね。デート行ってくるって家出たのは朝の九時。朝からずっと公園なんですけど!!ずっと!ずっとだぜ?!普通はさ、ショッピングとか水族館とか遊園地とかをさブラブラするんじゃねーの?!デートした事ねーけど!
当の本人達はブランコとか砂場で山作ったりとかしてて。今はダルマさんが転んだして遊んでる。二人とも二十歳すぎた大人な筈なんだけど。
「じゅーうーしーーまつがーー」
転んだ!!!
鬼役をしている名無しさんは大きな木で目を隠しながらそう言う。すると十四松は片手で身体を支えるようにして逆立ちしているではないか。なんなんだよ、その運動神経。
「はい!動いたー!」
ほんの一瞬。一瞬だけ動いた十四松を彼女は見つけて言った。
「タハー!!動いちった!!!」
ぱたぱたと十四松にかけよる彼女はそれはそれは幸せそうで。そんな彼女の笑顔を見ている十四松もほんのり頬が赤く凄く幸せそうだ。
「なんだよ。幸せそうじゃねーかよ」
名無しさんは俺達六つ子と幼馴染みで、小さい頃から一緒にいた。兄弟全員おんなじ顔だから見分けがつかないことなんてざらにある中、彼女はただただ一人一人を区別して分かってくれていた。
そんな人、家族かトト子ちゃんくらいで。知らず知らずに惹かれていたのは俺達兄弟一緒だったみたいだ。
六つ子、とひとまとめにされていた俺達を。俺一人だけを正面から見てくれて、分かってくれて、笑顔をくれる。そんな奴いたら好きになっちまうだろ?
でも名無しさんは俺達の中でただ一人十四松を選んだ。それはきっと見た目で選んだのではなくて中身で選んだんだ。それはとても嬉しいことだ。
だけどさ、俺もまだまだこの気持ちは抑えきれないわけで。きっと他の兄弟達も同じ気持ちだろうから、覚悟しててくれよ??
ー愛された彼女はー
(ずりぃーぞ!十四松!俺もいれろー!)