短編
□この気持ちをなんと呼ぼう
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己磨きの為と午前中は時間を潰したが!お昼を過ぎた今、手持ち無沙汰で何をしようかと考える。家の屋根の上は誰も居なくて、春の暖かな日差しがやけに眠気を誘う
。
十時すぎまで寝ていた筈なのだが訪れる睡魔には敵わなくて身をそのまま委ねるのだった。
ふと目が覚めたのは勢いのある春風に吹かれたからでゆっくり目を開く。するとそこには真っ青で雲一つない空と寝る前には居なかった彼女。
「あ、カラ松。起きた?」
すごい風だったもんね。
とふわりと笑った彼女に驚く。こんなにも青空と笑顔が似合う人間なんて名無しさんぐらいだろう。
「びっくりしたぜ?マイハニー?いきなり現れるものだからエンジェルにでもなったのかと思ったじゃないか」
いつものサングラスをかけてそう言えば彼女は、馬鹿だなぁと笑った。くすくすと笑う彼女は俺にかけられたブランケットをとって器用に畳む。
「俺が起きるまでずっと待ってたのか?」
隣で足を伸ばして座り寛ぐ彼女に聞けば二つの返事がきて。春風に吹かれた髪の毛がふわりとなびいた。
「カラ松に会いに来たら寝てるんだもん。しかもすごい安心しきった顔でね?そんなの起こしたくないでしょ」
へへへ、と笑う彼女はとても綺麗でそれでいて可愛かった。
「感謝するぜ、マイエンジェル」
何を話すでもなくただ空を見てぼんやりする。言葉のない空間さえも居心地がよくて、きっとそれは彼女なのだからだと思う。
俺の隣に座る名無しさんも同じ事を思っていればいいのに。なんて思ってしまう心は一体なんなのだろうか。
やがて日が落ちてきて部屋に戻るのか彼女は腰をあげた。
「ん?どうしたの?」
こちらを見た彼女の疑問は握られた手で。知らぬ間に自分が彼女の手を引いたのだとわかった。
なぜ、手を引いたのだろうか。と自分に疑問に思っていればそれは明確で。
「傍に、いてほしいんだ」
そうだ。傍にいてほしかったんだ。優しく微笑むお前から離れたくなかったんだ。
「仕方ないなぁ」
彼女の頬が染まっているのはきっと夕日のせいだろう。俺の熱くなった顔も夕日のせいだと思って欲しい。
隣にまた腰を下ろした彼女はさっきよりも近い距離に座っていて。繋がれたままの手はどこか熱をもっていた。
ーこれが好きなのだとー
(お前も同じ気持ちなら)