その他 中編・短編小説
□まんまる戦士を抱き締めて
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「いらっしゃーい!メタ様、カーくん!」
ばーんと壊れそうなくらい勢いよくドアを開いたなら、お目見えするのは二つのまんまる。
少しだけ大きいのは海のように青く、少しだけ小さいのは春に咲く桜のような桃色。
綺麗なくらいまんまるなダブルボールに飛び付き抱き締めたなら、離れさせようと必死な青と、嬉しそうにぎゅーっと抱き締め返してくれる桃色。
ぜんぜん違う二つだけど、どっちも大好きな球体たち。
「…いい加減に離れないか…?」
「ぽよー!##NANE1##!」
桃色こと、カービィは言葉は喋れないけれど、身ぶり手振り、全身を使って感情を表現する純粋な子。
「私はカービィに連れてこられただけで…」
「はいはい、中にどうぞ」
「…ああ、失礼する」
青いまんまるメタナイト卿。メタ様と呼んでいるけれど、どうしてもいやみたい。
大人でカービィや私の保護者みたいだけれど、律儀で流されやすいひと。
「今日のおやつはね。ウィスピーからいただいた林檎で作ったアップルパイだよ」
お茶よりもお菓子を出すのが先な、私たちの小さなお茶会。
カービィはお茶よりもお菓子だものね?
反対にメタ様はお茶が好きみたいで、珍しいフレーバーティーや私の星のお茶を出してあげると、目元がやわらぐ、気がする。
仮面をつけたまま飲むから、よく分からないけれど。
「ぽよい?」
カービィが紅茶を指差して首を傾げている。
「カービィのはミルクティーよ。ニルギリだからちょうどいいと思うの」
試しに普通のもいれてあげたけれど、ミルクティーのほうが気に入ったみたい。
メタ様から視線を感じたから、逆にミルクティーも出してあげた。
「……甘いな…」
「カービィ向けにお砂糖多めにしましたから」
「…毎度思うが、いったい何処からこんなに茶を手にいれてくるのだ?ほぼ毎日カービィや子供たちに振る舞っていると聞いた」
当たり障りなく、企業秘密です、と答えるが、怪訝な顔をされた。
この楽しい時間は、その秘密の上に成り立っているのです。
カービィは幸せそうにアップルパイを頬張り、メタ様は静かに紅茶を啜る。
私はそんなまんまるたちを後ろから抱き締めながら思うのだ。
幸せだなあ、と。