青の祓魔師 中編・短編

□嘘、偽りが身を染め上げる
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「ねぇ雪男、私を愛してよ」


何の前触れもなく、貴方に聞いた。


「何回目ですか…いつも言っているでしょう。貴方を愛していますよ」


じゃあ、なんで私の事、絶対に名前では呼んでくれないの。


本当は知ってるのよ?
貴方が見ているのは私じゃない事。



「嘘、よ」


「…嘘じゃないです」


「雪男は私を愛してはくれないのよ」


全部、知ってるんだから。

雪男は、嫌なのに私の我が儘に付き合ってくれてる事。


全部、お見通し。


だって、私は誰よりも雪男を愛しているし、一番良く知ってるもの。


…とは言いたいのだけれど。


あの子といるときは、私の知らない笑顔を見せるのに、

私には見せてくれないもの。


「私は、雪男を誰よりも愛しているの…。だから、私を嫌って、私を避けて」


雪男は目を見開いている。


だけどね、これは唯一貴方に伝えられた本心。


愛してくれないのなら、いっそ、とことん嫌いになって、私を避けてほしいの。


だって、そうしないと、もう壊れそうなんだもの。


狂気に染まる、一歩手前。

いいえ、もう狂気という枠に入ってるのかな。



「何…言ってるんですか…」


「私ね、人間不信なんだって」

「…え?」


「自分じゃ、全く分からなかったけどね。精神科医に、言われたの」


「どうして、いきなり…!?」


「私は貴方を愛している反面、貴方が大っ嫌い。気が付いてる…?雪男が好きなのは私じゃなくて、あの子なの」



私ね、雪男を私に縛り付けるのだけはやりたくないの。


だから、お願い、私を嫌いになって。


どうしても嫌いになってくれないのなら、私から別れを告げるから。



「だから、雪男、バイバイ。もう二度と会うことはないでしょう」


私の我が儘に付き合ってくれて、疲れたでしょう。


たとえ本当に貴方が私を愛してくれても、私には信じられないの。


だから、どうかあの子と幸せになって。

あの子を幸せにしてあげて。


嘘、偽りが身を染め上げる





矛盾だらけの結論。


「僕は本当にあなたを好きだった。」


「それだけじゃ、ダメだったんですか?」





翌日、私はここからいなくなった。




 
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