PandoraHearts
□〜Retrace:V〜
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ユーリside
ーーいきなり夜ーー
「只今、帰りましたお嬢様たち〜。って、あららァ?レイムさんじゃありませんかー」
<ひょこ><ガタ…>
ブレイクがテーブルクロスの中から出て来た。レイムは驚いた。シャロン、ユーリは平然とした顔で声を合わせてーー
「おかえりなさい」
「ゴホ…あ…相変わらずだな君は…ザークシーズ=ブレイク。普通にドアから入って来れないのかね。」
レイムがそう言うとブレイクはテーブルの上に座ってこう言う。
「あっハッハッ。君も相変わらず堅物ですネェ〜。…で?わざわざ君がやって来ると言う事はーーパンドラで何かありましたか?」
<ひょい>
ブレイクはレイムのケーキを盗った。レイムは苦しそうな顔をする。
「……先日捕らえた違法契約者について」
「ああ…"蟲"でしょう?私とお嬢様たちも明日様子を見に行く予定デスヨー。なんたって"首狩り"に繋がる重要な手掛かりですからねぇ〜私も実は結構楽しみに…」
<もぐもぐ>
ブレイクは食べながら言う。
<カチャ>
レイムがティーカップを小さな音を立てて持ち上げる。
「逃げられた。」
<ペロ>
ブレイクはお皿を舐めた。
「…………は??」
<カチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャカチャ>
レイムはティーカップを持ったまま震える。
「逃げられたんだよ…っ。本日、午後二時。監視の者6名を殺害の後に逃走。未だ蟲の消息をつかめてはいない」
「…………………君って人は…」
ブレイクは皿を持ったまま少し微笑む。
「ブレイク…お前…」
ナイトメアはブレイクが何を言うかわかった。
「役立たず」
ブレイクは肩に乗せているエミリーと声を合わせて言う。
<ガタン>
「なんだとっ!!」
レイムは立ち上がる。ナイトメアは溜め息を吐く。
『やっぱり…』
「だって相手は手負いでしょう〜?だから我々だって回復するのを待っていたのにーぷーぷー」
「うぐ…」
ブレイクの言葉に文句が言えないレイム。
「バーカ、バーカ、バーカ」
エミリーがそう言う。
「…」
シャロンとユーリは静かに紅茶を飲む。
『二人共…優雅に紅茶を飲みながら呆れているな…これは…』
ナイトメアはシャロンとユーリの様子を見てすぐに察した。
「そりゃあ…こちらに油断があった事は認めますが…!」