銀色少女

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空港を抜ければ、黒い車が止まっていて、和気あいあいと入っていく家族。
奈々さんの腕の中にツナ。家光さんの腕の中に私という感じだ。


「イタリアはいいぞぉ〜何たって食べ物が美味いからな!夕映もビックリするぐらいキラキラした所だぞ〜!」


『ハハハ、』


若干それどころではない。
さっきの視線の事で頭が一杯だ。3歳の私が出来る事なんて知れている。
助かる方法は、大人の近くに居ることだな。うん。
ついでにツナにも目を光らせておこう。



「奥さんも久々に家光さんと会ったんだし、2人水入らずでショッピングなんてどうですか?」



運転手が家光に話し、家光さんも万更ではない雰囲気だ。
…確かに、2人は私を産んだために新婚旅行もまだだったはずだ。だが、これは家族旅行!
家族揃ってなくては家族旅行ではない!!


「だがなぁ〜」


「なぁに、2人がいない間は私達が子供の面倒ぐらい見ますし…あと数日あるんでしょ?」


「まぁ…」


「あなた…」


「じゃあ、数時間だけ…」


『!?』


家光ぅぅう!!
子供より妻を取るのか!!いや、愛妻家は良い事だが…!!



『あ、あの……!!』



「なぁにお嬢さん、あなたたち姉弟の命は私達が命をかけて守りますから!」



「頼んだぞ」



「はい、家光さん」



命とか掛けられてもありがた迷惑なんですけど…!
私の叫び虚しく、キラキラと華やぐ街に降りていった家光さんと奈々さん。
ツナなんて半泣きじゃねぇか!



「ユっちゃん…」



『大丈夫だよ!ツナの大好きな所に行こ?』



「うん!」



子供は単純。笑えば笑ってくれるし、何を考えてるか顔に書いてあるから可愛い。



―ゾクッ…



『…!!(ビクッ』



「どうしたお嬢ちゃん?」



『…あの影に…誰かいる?』



指差したのはレンガの店に囲まれた路地裏。微かに金髪が見えた気がする…



「…ほぅ…ちょっと待っててくれよ?お嬢ちゃん」



おじさんが路地裏にゆっくりと足を進めていく…懐に手を入れているから多分拳銃を握っているんだろう。



『……おじさん!上!』



路地裏の裏道の隙間から降ってくる金髪に私は目を開いた。
おじさんに注意を呼び掛けるが、鈍い音が響いておじさんは倒れた。


「シシシッ…超弱え〜」


「お前は…暗殺部隊の新人のベルフェゴール!!何故こんなところに!?」


「暇だから〜、って言いたい所だけど…ボスの命令なんだよね」


「XANXUSが…!?俺達に何の様だ!?」


「おまえらには用なんてないよ。あるのはそのガキ。」


そう言って、ナイフでこちらを指すベルくん。
頭のティアラが気になって仕方ないが、取り合えずツナを庇ってみる。
誰か知らないが言ってもまだ子供だ。大人が数人いるこっちが有利…な筈だったが―…



―バタバタッ…


「う゛ぉおぉおおぃ!!弱ぇえぞ!!」


『(ちゃっかりやられとるー!!)』


周りを囲むようにいた男の人はロン毛銀髪にやられていた。
この銀髪の動きはそんなに早くは見えないのは私だけだろうか?



「ユエちゃん…」



『大丈夫だよツナくん。泣かないの、お姉ちゃんは大丈夫だから、車にいる運転手の人のとこまで走りな?出来るね?』



「やだっ!やだっ!ダメだよ!できないよ!」



泣きじゃくる弟の頭を撫でて落ち着かせる…今2人で逃げても、捕まえられるのがオチだ。
なら、1人でも逃がすべきだ。



『いいツナくん、何があっても後ろを振り向いちゃ駄目だからね?絶対よ?』



「ゔお゙ぃい!!何こそこそ話してんだ?」



「大人しく捕まるんだね」


近付いてくる2人に私は身構える。ツナさえ逃げれば、それでいい!



『行けツナ!!』



「う、うわぁあぁあ〜〜!!!」



ツナは運動神経は悪い訳じゃない…逃げ足は何故か早い。普通に走っているときはよく倒けるが、本気で逃げているときは、転ばない。



「チッ、1人は逃げたか…まぁいい、目的はこっちだしな」


「シシシッ、残念でした」


『(よし!ツナが見えなくなった!)』


ツナさえ逃げればこっちのものだ。私は睨むように2人を見つめた。つっても、金髪は前髪が長くて目が見えないけど…



「何こいつ……(本当に一般人?目がヤバいんだけど…)」



「うお゙ぃいぃい……(3歳児の目じゃねぇぞこりゃ…)」



2人を見ながら、一瞬で足に力を入れて金髪の懐に飛び込む。
ベルから見ればそれは瞬間移動の様で体が反応しなかった。
その瞬間、懐に入っていったナイフを1つ拝借した夕映は金髪の首に添えた。



そして―…



『今日はいい天気で絶好の旅行日和だやったーなんて感じていました。だけど、それは空港で向けられた初めての殺気で気分はがた落ち、最悪です。えっ?誰のせい?おまえらだよ。
空港からここまでばれてないと思った?家光さんは全然気付かないし、最悪。
そんで、頼りにしてたおじさん立ちより強い人が来ちゃうし…血が出てないから殺してないんだろうけど、大人のゴタゴタに子供を巻き込まないで欲しいです。はっきり言って 迷 惑 です!』



よし、言ってやった!金髪くんは何でか小刻みに震えてるし…銀髪の男の人は、なんか呆然って感じだ。若干顔が青い気がする。
仕方ないから、最後に笑っておこう。



『……(ニコッ』



「っ…!スクッ!こいつスゲェ怖い!」



「チッ…そんな脅し俺にはきかねぇ『脅し?冗談。私は注意をしてるだけだよ。君達がおじさん達をボコボコにするには訳があるだろうね。まさか君たちのいうボスが無意味に私を連れてこいなんていうわけないしね。だけどね、私はイタリアに知り合いがいないし、君たちに恨まれる覚えもないよ。だって初対面だもん。

あっ、私は沢田 夕映です。はじめまして。ってなわけで、思いあたるのは今イタリアで仕事しているお父さんの知り合いって線、しかもお父さんとそのボスは仲が悪い。だから―家光の子供を連れてこい腹いせにボコボコにしてやるってか?』ゔぉおぉおおい……」


あれ?銀髪のお兄さん涙目だ。
どうしたの?




 

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