銀色少女

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ミンミンと鳴り響く蝉の声に嫌気がさした。


そう……夏が来た…。








『あーづーいー…』


溶けそうなほど暑い日差しの中で私は、アイスを求めて綱吉と冷蔵庫に向かう。


その間もツナは私から離れようとしない…それはますます体温をあげる。


『おかーさん、アイスください…』


「あいすぅーー!」


「ふふふっ…わかったわ!待っててね!」


そう言いながら冷蔵庫ね一番上を開けてゴソゴソと探る奈々さん。夏にはアイスだろう。クーラーもいいが、今日は風鈴の横でアイスを食べる事にした。


「ぼくは、チューベットがいい!チューベット!」


「はいはい!どーぞ!」


ツナにアイスを渡す奈々さんは私にも目線を向けた。
そして、私にも好きなアイスを聞いてきてくれる。多分、ここに無くても買いに行ってくれそうだ。

『あるものでいいよ…私は何でも好きだから』


「そう、じゃあ…はい!」


渡されたのは、ツナと同じチューベット。


奈々は考える…何故こんなに姉弟で違うのだろうか?
弟は無邪気で、手のかか子供なのに、姉はもう何もかもが大人っぽく…正反対といってもいいかもしれない。


「余り…笑ってくれないのよねぇ…」


余り…いや、全然笑わない。
声を出して笑う事をせずに、この頃は子供とは思えない程の不思議な顔をする。
そんな夕映に奈々は少し心配になる。


そんな中で、奈々は風鈴を眺める姉弟に目線を向けた。


『ツナくん…風が気持ちいいね』

「うん、あつーい!」


ほんわかと頬笑む夕映。
その顔は、3歳児の顔ではなく…優しく見守る天使の様で…。


…………天使…。


奈々の心にひっかかてしまった。


もしかしたら、この子は何処かに飛び去ってしまうのではないだろうか…?
不安が不安をよんで…いつの間にか夕映の肩を掴んでいた。



―バッ…



『っ…おかー…さん…?』


「…あっ、嫌だわ私ったら!」



パッと手を離す。


何を考えているんだと自分がバカらしくなる奈々。
そんな奈々の様子を見て、夕映は首を傾げる。


……その時だった…


夕映の体の中に流れ込んでくる…感情…


『…っ…!?』


思わず、目を瞑って耐える様な痛み。
悲しみ、悲劇、こっちが悲しくなってしまいそうな感情の数々。



行ってしまう…私の私の…大切な子が…!何もいわずに…何も感じさせずに…飛び立ってしまう…。
イヤよ…イヤ!お願い…何処にも行かないで…お願いよ…っ。

飛んで行かないで…!
消えてしまわないで…!

貴女は…すぐにいなくなってしまいそうで…私は…とても怖いの…!すごく怖いのよ…





恐怖…何に恐れているのか…何を考えているのか…。奈々さんの不可思議な行動が全て合致した瞬間だった。



……私は何処にもいかないよ…


「……ユっ…ちゃん…」


全てを見透かすような目で全てを知っていると言わんばかりに言う。

だけど、その言葉に嫌気はなく、むしろ心を優しく…優しく包み込んでくれるような優しい一言…。



奈々は、そんな夕映にいつも通り微笑みかけた。



奈々の心の声を聞いた夕映は今日の目標を立てた。
今日は…奈々さんと一緒にいよう…








私は…貴女の悲願に…答えられるか分からないのだから…







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