足音を忍ばせて船長室のドアに近付く。

今日も一人難しい本とにらめっこしているのであろうこの部屋の主を驚かせようと、今週一週間をかけてクルーたちと命がけの作戦を考えたのだ。
ここで私がしくじる訳にはいかない。

息を深く吸い込んで止めるとドアノブに手をかけた。


「キャプテン!とりっくおあとりーと!お菓子をくれないとイタズラしますよ!」

決めていた通りのセリフを一気に言い終わると、私は得意げにキャプテンを見た。






……が。

やはり私なんかがキャプテンを驚かすのは100万年早かったようだ。


「…なんだ」

「ひぃっ!いえ、何でも、何でもござりませぬ!ただの戯れでござりまするぅ〜」

「なんだおまえ、おれにイタズラしようとするとはいい度胸じゃねェか」


地でオバケと言っても通用する暗黒の笑みを浮かべたキャプテンが舌舐めずりしそうな勢いでツカツカと歩み寄ってくる。

「いえいえいえいえそのようなつもりは…!ハロウィンに便乗してお菓子でもいただけないかと思っただけなのですがっ」


私が持っていたカボチャのバケツを投げ捨て、シャチに無理矢理着させられた裾の長い魔女服を翻して逃げ出そうとすると、ものすごいスピードでむき出しの肩をがっしりと掴まれた。


「なんだ?魔女さん。お菓子が欲しいんじゃなかったのか?」

「あー、えっと、もうイタズラさせていただいたのでー、お菓子は結構ですぅ」


助けを求めてペンギンたちの隠れているはずの背後を振り返ると、既に他のクルーたちはいなくなっていた。

絶望のあまり力が抜ける。

振り返ったシャチが口パクで何か言ってグッと親指を立てた。


…ファイトッ!じゃないわ!助けろ!


「あのー、そういう訳で離していただけません」

「おれはまだイタズラもしてねェしお菓子も貰ってねェ。そしておれは甘い物がキライだ。よって、おれにはイタズラする権利がある。わかるな?」

「クソぉぉ離せ変態!野生のモンスター!隈!不健康!離せぇぇぇ」


イタズラ返し



だからやめようって言ったのに…

もうもうまじまで土方愛してる

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