私は一人甲板に出ると、10月のひんやりとした風を顔にあびた。
船内では今日も呑めや歌えやの大騒ぎが繰り広げられている。
いつもより心なしか呑みすぎて、朦朧となった頭で家族がいる幸せを噛み締めていた。
「なーに黄昏てんだよい」
後ろから突然声をかけられる。
「あ、マルコさん。いえ、楽しくっていいなぁと思って」
「そうだねい」
「たくさんの兄ちゃんたちに囲まれて幸せですぅ」
いつの間にか隣に来ていたマルコさんが私の顎に手をやって顔をあげさせる。
「相当酔ってるだろい。ったく弱ェんだから程々にしろといつも言ってるじゃないかよい」
「いいじゃないですかぁたまにくらい〜今日はお祭りなんだし〜人にはやりすぎだって必要なんですよ〜」
「ったく呆れた末っ子だよい」
マルコさんはため息をつきながらもどこか嬉しそうだった。
私はそのままマルコさんにもたれかかると、星空を眺めながら言った。
「マルコさん」
「…」 ああああ
「マルコさん、怒らないでくださいよ」
「はいはいなんですか酔っ払いさん」
「…お兄ちゃん」
「あーもう!お前が悪いんだよい」
マルコさんはそう言うと突然私を持ち上げる。
「ちょっえ?どこ行くんですか?お菓子ならあげたじゃないですか、それルール違反!」
あああああああ
ひょいと肩に担がれながらその広い背中をごんごんと殴りまくっても、不死鳥の能力云々以前に私の力では何の効果もない。
「おれの部屋だよい」
「きゃぁぁぁぁ!怪鳥ー!降ろせー!」
私が喚き散らすとマルコさんがニヤリと笑う。
「覚悟しとけよい」
悪夢の続きを楽しみましょう
「マルコとお嬢見なかったかい?」
「さぁ…さっきまで甲板に居たけど…そういやさっき叫び声しなかったか?」
「くっそあのフルーツ…」
「「「殺す」」」