いつも通りの服で、いつも通りの甲板で、いつも通りに宴が開かれている。
違うのはそのメニューくらいだ。
「仮装とかしないの?」
パンプキンポタージュを口に運びながら私が問えば、いつも通りのメイクのキッドがふてぶてしく答えた。
「なんでおれが仮装なんてしなきゃなんねェんだよ」
私は頬を膨らませるとブツブツと独り言を言った。
「まぁ、元から魔王だもんねー仮装してもさして変わんないよねー」
キッドが何やら威嚇してきたけれど、聞こえないフリをしてやった。
ここのクルーたちは年柄年中ハロウィンみたいな格好をしている。
でも、それだけに本気で仮装したら誰よりも似合う人たちばかりだと思うのだ。
だいたい、もとがいいんだから似合わないはずがないじゃないか。
私はキッドたちに着てもらおうと密かに服を作ったりしていた。
「見たいじゃん。ドラキュラなキラーさんとかさ…」
「キラーがドラキュラなら、おれはなんなんだ?」
私の独り言を聞きとがめたキッドがさして興味もなさそうに聞いてくる。
「え、魔王以外ないでしょ?」
「てめェ…」
完全にやらかした。
ますます怒らせてしまったようだ。
私はしかたなく、頼み込むことにする。
「お願いしますよー、ぜっったい似合うから!一生のお願い!」
「よし、じゃあおまえもやるなら考えてやってもいい」
「仕方ないっすね…!」
そんなこともあろうかと、自分の分も作っておいたのだ。
我ながら自分の用意周到さに嬉しくなる。
私は自分用の地味目な悪魔の衣装をヒラヒラとキッドに振って見せた。
数分後、着替え終わって甲板に戻ってみるとそこは、
「あれ、私死んだ?」
「あァ?何言ってやがる」
上座でテーブルに足を投げ出して踏ん反り返っているキッドが言う。
予期せぬ事態だ。
キッドも、その周りを囲むドラキュラキラーさんや化け物クルーたちも、自分の作った服を着ているはずなのに、この船のインテリアとも合間って思ってた以上にリアル。
それはまるで
招かざるパレード
「やばいすごすぎ…ずっとそのままでいて!」
「…断る」