イナGO短編集
□甘えたい盛りなの。
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「連立方程式だからxとyでこういう風に2つ式作るだろ?」
「………で答えは?」
「だーかーらー…」
今、霧野先輩の家で数学を教えてもらってる。
霧野先輩は黒縁眼鏡をかけてて、超理系な感じだ。
ヒロ兄の眼鏡に憧れて買ってみたとかなんとか。
三学期の数学は2年生のを先取りしてやってるから
いまいち良くわかんなくて。
だから一個上の先輩に聞いてます。
まぁ恋人だから、ってのもあるんだけど。
「……わっかんないぃー…」
「はぁ;」
最近は数学の授業があった日は毎日教えてもらってる。
実際のところ目的は数学を教えてもらうためではなく、
先輩に甘えるためなんだけど。
いつも隣に座って教えてもらってるから、超甘えられるんだよなぁ。
「……無理っぽいです」
「ちょっとはわかろうとしろよ;」
「ん…」
先輩に寄りかかる。
「………」
先輩はいつも何も言わない。
けど、腕を回して倒れないようにしてくれる。
「…先輩?」
「今考えてんの」
「……そーじゃなくて…
もっと甘えても良いですか」
オレがそう言うと先輩はきょとんとしてオレの目を見た。
「……良い…けど…?」
オレはそれを聞いて、
先輩のあぐらをかいている膝に仰向けになって寝転ぶ。
先輩やっぱ顔整ってるなぁ…なんて思って見上げていると、
「……何?まだなんかある?」
「頭撫でて?」
「…甘えすぎ」
そう言いつつも、先輩はオレの頭を撫でてくれた。
「たまには良いじゃん。勉強ばっかじゃつまんない」
「いいけど」
先輩の手は温かくて、優しくて。
小さかった時を思い出した。
お母さんの膝枕を、思い出した。