おりじなるすとーりー(文)

□@
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日本−東京



東京都の4分の1
東側のほとんどを占める巨大な学校

都立東鑑軍事学園


広大な敷地には
和風、洋風、いろいろな建築物が立ち並ぶ。

その東北側にある巨大な建物
都立東鑑軍事学園-中等科塔


1学年80クラスあるマンモス校の入学式はとても長い。


しかし初等科があるせいで既にグループができているため
緊張して誰とも話せないなんて人は少ない。

式が終わり
クラスごとのホームルームを行う為各自教室待機が出た今
私の様な“緊張して誰とも話せない”人はアウェーだ。

しかもこの1年80組でこの制服に慣れていないのは
どうやら私だけのようで――

つまりは
周りは知ってる人がいる空間で
私はひとり完全ぼっちというわけだ。



「あの…あなたもひとりですか?」

…否、他にもぼっちがいたようだ。

「あ、すみません突然…僕、伍橋って言います…」

いたって普通の男子だった。
黒い髪、黒い目、
真面目そうかつ勉強できそうな見た目の男子だった。

「正純です。」

自分も座って居た椅子から立って名字を名乗った。

「えっと…、
 他小からの入学ですよね?」

「…まぁ、はい。」

「ですよね!
 唯一見たことなかったので…」

その言い草はまさか、同じ学年の生徒を
全員覚えているとでも言うのだろうか。

「このクラス、みんな小等からの持ち合がりなので…」

「伍橋くん、この学年の人全員覚えてるんですか?」

「まさか…、900人いるのでさすがに全員は…」

彼はそういうが、1200人の中から
私たち的にはランダムで選ばれた30人の中で
私だけ見た事がないということは、
初等科の900人は覚えられるのだろう。

やっぱり頭いいのか。

「正純さん、タメ口でいいですよ。みんなそうなんで。」

「じゃあ私もタメで。あと正純さんもやめて。」

「じゃあ、」

伍橋が言いかけたところで、教室の前のドアから
音を立ててスーツの女性が入ってきた。

彼は可愛い女子の様に手を振って自分の席に戻った。



「皆さん、入学式お疲れ様でした。
 これから1年間、よろしくお願いします。」

先生は丁寧に、かつ上っ面だけであいさつした。

「これからの日程を軽く説明します。」

彼女は話しながら黒板に日程を書き始めた。

「本日4月6日は入学式なので、この後は解散になります。
 明日7日は、
 中等科から参戦可能となる軍事行為についての説明、
 委員会決め、部活紹介となります。
 8日は日曜日なので休みです。
 そして9日は早速、国算理社のテストです。
 初等科で培ったものを調査するものなので成績には影響しません。」

先生の言葉を
聞いているものもいれば、早くも寝ている人もいる。

「それ以降の予定は、テストの後発表します。
 HRは以上です。部活を見学していく生徒は言って下さい。」

以上ですと言いかけた先生は
忘れてたのを思い出したようにメモを見た。

「正純さん、正純さんは生徒会室へ行って下さい。」





私は何も悪いことはしてない。

生徒会に呼び出され、
クラスでは早速ひそひそと噂されたが、
特に何か悪い事をしたわけではない。

おかげで生徒会室がどこにあるのか聞けなかった。

この学校は広い。
朝痛感したはずだったが、地図があれば問題ないと思った。


生徒会室が職員塔にあることに気付くまで5分。
職員塔に歩いて行くのに10分。
なんて無駄な時間だろうか。

職員塔は、日本の立派なマンションのような作りで
生徒会室は4階だそうで、エレベーターを探すのも面倒だったので
すぐに見つかった階段で4階まで上った。

マンションの横幅の割に
中々ドアが見えないと思ったら、
この階にあるのは生徒会室だけのようだ。

完全にマンションを思わせる生徒会室の前に立ち、
インターホンを押した。

生徒会室に入るという感覚は
これでよかったのだろうかという
小さな疑問が浮かんだが、まぁ東京だし。
という理由で、私の頭は納得した。

「ごめんなさい、今手が離せないの。
 鍵空いてるから入ってきてー」

インターホンから女性の声がした。

自分から呼び出した癖に、
とか言ってやりたかったが、きっと先輩なので
面倒の無いようにおとなしく入った。

「失礼します。」

広い廊下だった。

マンションの何部屋分かぶち抜いてようで
廊下だけでもなかなかな広さがあった。

右側には窓しか見えないが、左側にはドアがいくつかあり、
突き当りに大きいドアがあった。

突き当りの大きいドアに
生徒会室と書かれた札があったので改めてノックをした。

「どうぞー」

「失礼します」

何がどう手が離せなかったのか
何人かの生徒がゆったりとお茶していた。

「さっきはごめんなさいね、
 自室で書類が倒れてきちゃって…」

遠い目をしているところを見ると
まだそのままなのだろう。

というか、職員塔に自室があるのか…

「えっと…自己紹介しますね、
 副会長の上院愛子と申します。」

名乗ったのは、こげ茶髪の長い優しそうな女性で
奥にいる偉そうな男性にお茶を注いでいた。

「そしてこの方が、生徒会長の一ツ橋龍平さんです」

「、中等軍1年80組、正純壱歌です。」

「はい、存じております。」

笑顔で答えた彼女の礼儀は正しすぎるくらい正しくて
私には神々しく見えた。

「愛子、あいつらは、」

「中等軍は1年以外、今日が委員会と部活の更新日ですので」

「あぁ…そういうことか…」

対する彼は、どちらかといわずとも
彼女を使っている様子だった。

「壱歌さんを待たせるのもあれですし、
 先にお話ししてもよろしいですかね?」

「あー…」

会長は紅茶を飲んで突っ伏した。

寝たのか?

「すみません壱歌さん、
 そんなわけで、他の役員が不在でして
 お呼びたてして待たすのもあれですので、
 先に要件を話してしまいますね。
 どうぞ、お座り下さい。」

「あ、はい。」

座った椅子はやわらかく、高そうだった。

彼女は向かい側に座り、お茶を出してくれた。

「早速ですが、
 学校側には言ってあるんですか?」

「?何のことですか?」

「国生会の副委員長だそうですね。」

「!…」

「驚いてますね」

「そうですね、
 学校には隠してはいませんけど…
 よく調べましたね。国家機密ですよ。」

「ちょっと調べただけですよ。
 最年少SS級保持者は、有名人ですから」

「…」

しばらくの沈黙。
と共になかなか気まずい空気が流れる。

「この学校を調査なさるおつもりですか?」

「…それは目的ではありません。」

「では、何が目的でこんな平凡な国の
 平凡な高校に転校なされたんですか」

「…」

「…………会長」

彼女が呼びかけると
眠そうに伏せていた会長が口を開けた。

「………
 正純壱歌、東鑑学園高等学校生徒会長の名により
 貴様を退学処分とする」

「…はぁ!?」

「とまぁ、俺はこんなこともできるわけだ。」

「喧嘩売ってるなら買いますけど。」

「んなわけねぇだろ。」

「じゃぁあれですか、
 目的を教えなければ退学させる的なあれですか、」

「惜しいな」

「目的を教えるか、学校を辞めるか
 ここの生徒会に入る。
 その3択です。さぁ、どれにします?」

「すみません、何さりげなく生徒会に入るとか選択肢に入れてるんですか」

「実は今の生徒会、1人足りないんですよ。
 軍事に影響が出てるんですよね…。
 壱歌さんなら学力はもちろん、体力等も問題ないですし…」

この学校に限らず、都立学校の生徒会は
職員を含めた選挙から生徒会長として1名選出される。
そしてその生徒会長は、他6人の生徒会役員を選ぶ権利を与えられる。
生徒会長を含めた7人が
初等科から上がってきた中等科以上の者で形成されることは
暗黙の了解であり、それが覆されることは極めて少ない。

「転入生生徒会に入れたりしたら、
 反感買いますよ、生徒会長。」

「そうは行ってもな、
 せっかくのSSランク、生徒会に欲しいんだよ。」

私がなぜこの学校に来たのか
他人言うよりはマシだな、そう思った。
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