戦国BASARA(中編完結)

□女物語
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如月家に一人の姫が産まれた。
名を鈴花と付けられた。



「可愛い子やね。貴方様に鼻筋がようそっくりですね」



「御華よ、立派な姫君を産んでくれて有り難う」



「ふふ、きっと貴方様に似て立派で頭が良く強き姫になりまするよ」



「ならば、御華に似て美しく世の男を魅了する程の顔立ちになろう」







如月の姫君は大切に育てられた。けれど、姫君が五つの時に母である御華が病死してしまった




『ちちさま、ははさまはねてる?』



「ちと疲れたのだ。寝かせておこうな」



『あのね、ははさまおきたらいっしょにおにわであそぶの!ははさまはてまりあそびじょうず!だから、鈴花もおしえてもらうの』



「…そうか。楽しみじゃな」





死がどういうものか知らなかった。あの頃は母様はずっと気分が悪く寝ているだけだと信じていた










「………昌次様、我らの計画を今こそ実行するべきです」



「そうじゃの。鈴花も今年で十一になったしのう…まずは豊臣辺りから攻めて行くか」



「では、私は準備を進めます。」



「うむ。鈴花をここに呼べ」



「承知」









父様の名は如月昌次(マサツグ)。如月家の次男として産まれた。

本来ならば如月家の長男である久松(ヒサマツ)が如月家の跡取りでなければならなかったのだが、病弱であった為に跡取りの座から降ろされてしまったのだ







昌次には裏の顔がある。表は子を可愛がり愛妻家として世に知れ渡ったがその裏では悪と呼ばれている。



娘である鈴花が産まれてからすぐ如月家が天下を取るためにと計画を立てていた。














『秀次様の所へ嫁げと?』



「そうじゃ。鈴花ももう、嫁に行っても良い年頃であろう?」



『し、しかし…私はここでまだまだ知らぬ事を学びたいのです!だから、祝言などっ…』




「ええい!儂が嫁げと申したら嫁ぐのじゃ!」




『…………………………―――はい』







父様は変わってしまった。優しきあの頃の父様は偽者だったのだろうかと疑ってしまうぐらい








『………豊臣秀次様とはどの様な殿方なのだろうか』




「姫様、如何なさいましたか?」



『お米(ヨネ)!聞いてくれ…父様が私に豊臣秀次様の所へ嫁げと申したのだ』



「……………左様で御座いますか。姫様は嫌なのですか?」



『当たり前じゃ!!私は私が本気で愛した者としか結ばれたくはない……何てこの戦の世には通じぬがな』



「……姫様」



『如月家の為ならば致し方ないであろう。私が嫁ぎ何が変わるのならば私は喜んで秀次様の所へ嫁ごう。だが…お米は付いてきてくれるか?』



「勿論に御座います。姫様を一人にしたら何をするか分かりませんからね」



『もう、お米ってば!それは幼き頃の話であろう!!』









私は気付かなかった。この祝言の意味と企みを。そして、私は悪魔と地獄を見ることになるなど思わなかった。

















『ど、どうしたら良いのじゃ!?ま、まずは挨拶か?』



「落ち着き下さいませ姫様。いつも通りで良いのです」



『う、うむ!し、しかし…いつも通りとはどんなのじゃ?』



「笑ってれば良いのです。姫様らしく」



『……お米、有り難う!!』



「いえ、姫様の見合いが上手くいきますようにこの米も祈りまする」



『行って参るぞ』







秀次様とは一体どんな殿方なのかなど私には分からぬが、きっと心優しきお方ならば良いな。





『きっと上手くいく。母様が見てくれてるからな』








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