戦国BASARA(中編完結)

□女物語
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俺様はいつからかすがの事が好きだったのか…考えれば考えるほど分からないし思い出せない。



里を抜けたかすがが凄い憎かったし何で裏切ったんだっていつも責めてた。けど、上杉の旦那に一目惚れして上杉の忍になったって聞いて正直、なに考えてんだって怒った。

これだから感情を押し殺せてない忍は使えない
感情のない人形。忍は道具。


それしか考えられなかった。いや、それしか考えたくなかった。



“だが、やはり好きな者と共に在りたいと思 うのは仕方がないではないか。”
仕方がない…それを言ってしまえばそれまでだ

旦那は素直だ。素直すぎて見ていないと危ない事に首を突っ込んでしまう。オマケにお人好しと来た。面倒を見るこちらの身にもなって欲しいぐらい。


だからこそ、ほっとけない。ほっといたら旦那はどうなるか分からない。姫さんも旦那と同じ人種だろう。

あのくの一が姫さんを慕う理由…俺様と同じだと思ってた。真っ直ぐで馬鹿正直でお人好しで素直で弱いけど強い。だから、ほっとけない



“確かに、猿の意見は正論かも知れぬが我々 にはどうだって良い。姫様や若が幸せならば それが我々の幸せ。姫様が真田殿と共に生き ると申されれば我々はそれに従うまでだ。”



汚れがない瞳、あったのは寂しさと真っ黒な闇ぐらい。あの闇は姫さんへの恨みと憎しみだったのかそれとも、姫さんの母親である御華に対する恨みと憎しみだったのかは分からないけど俺様はあのくの一が姫さんを殺すなんて思わない

いや、思えないのだ。姫さんを慕い思う気持ちだけは絶対に本物だって分かるから。きっと理由があるんじゃないか…姫さんを襲わなきゃならない理由が。


「……俺様も忍らしくなくなってきたなぁー」



自分に苦笑いをする。下から楽しそうに笑っている声が聞こえる。幸せそうな声にこっそり屋根裏から退散する。

出来ればこのまま、ずっと…続けばいい。二人の幸せが二人の平和がずっと…。














「…………………………………」


『屋根裏に猿飛様がいらっしゃったのですね』


「え、あ、いや…その…」


『隠さなくても大丈夫ですよ。真田様がさっきから屋根裏ばっかり見てるから猿飛様か誰かいるのかなって…当たりでしたね。』


ふふふと笑うと真田様は困ったように笑った。


「先程、佐助が来ていて少しの間共に行動することになったのだ。暫くは気が散るかもしれませぬが我慢して下され」


『大丈夫ですよ。猿飛様が護衛に付いてくれてるのならば安心ですし。それに猿飛様とは少し話したいことも合ったので…。』


「話したいことでござるか?」


『はい。と言ってもつまらない話ですよ。本当につまらない話です。』



話の内容は話してはくれない鈴花様に戸惑う。どんな話なのか…もしかしたら佐助と出来てると不吉なことまで考えてしまう。




「某には話してはならないことでござるか?」


『……そんな事は…ないですけど、知りたいですか?』


「出来れば、話して欲しいでござる。」


『猿飛様に言われたのです。“わざわざ死にに行かなくてもいいだろ”って。今回の件で本当にそうだなって思いました。』



“あら、それは違うわ。私は死に行くつもり はない。戦いに行くのよ!全ての原因が如月 家にあり、私にあるなら全てを終わらせるの も如月家であり、私である”



『生意気な事ばっかり言ってたくせに死を目の前にしたら体の芯から震えてきて…自分から血が流れる度に恐くなって…猿飛様の言う通り私は弱い…すごく弱い人間』


「そんなことはありませんっ!!」


『あるんですっ。私は弱い!!だから強くなろうって思った…弱いせいで誰かが死ぬなんて見たくなかったからっ…!でもっ…でも力があっても無意味だったの』



無意味だった…そう、本当に無意味。ううん、無力なんだ。ちょっとしただけの事で喚き泣いたり取り乱したりしてしまう



『今は…強くなるのが怖い…怖い事だらけで…どうしたらいいか分かんなくて…結局、すがり付くしか出来ないんです…』


「それは違うよ姫さん」


「佐助!?」


『さ…るとび、さま?い、いつから!?』




シュタッと降りてきた佐助は鈴花の泣き顔を見ていきなり、ぶっと吹き出した。その事に気が付いた鈴花は急いで幸村を盾にし佐助を見る。



「佐助失礼であろう!」


「だって…姫さんの泣き顔ぶざい…いでっ」


「それ以上鈴花様を侮辱するならばこの幸村、佐助だろうと容赦はせぬ!!」


「殴ることないじゃん!旦那は自分が馬鹿力だって少し自覚してよね本当に!流石の俺様も頭かち割れちゃうよー」


「いっそかち割れてしまえばオカン癖も治るのではないのか?」


「ちょ、旦那が黒い!!てゆか何そのオカン癖って!俺様、オカンになった覚えはないよ!?その前に俺様男だからねー?」


「自覚がないのか!!あれ程の母性を醸し出していながら…いや、無意識にか。それより何のようだ佐助」


「今更!?ってもう疲れたから突っ込まないけど、姫さんに関係する情報と…」




チラッと私の顔を見る猿飛様にきっと私にはあまり聞かせたくないのだろう。だが、両方私に関することならば私が聞かない訳にはいかない


同じ様に真田様も私の表情を伺っている。



『……話してください…私は大丈夫ですから』


「姫さんがそう言うなら…話すけど。もう一つはあの紗知って言うくの一達の事で情報がいくつか入ってきたんだ」


『………さ、紗知達の…?』


「鈴花様やはり鈴花様は…」


「聞くか聞かないかは姫さん次第だけど、どの情報も姫さんにとっては良いことではないよ。今なら“逃げ”れるよ?どうする?」



“逃げ”と言う言葉を強調しながらこちらを見つめる猿飛様と心配そうに手を握ってくれる真田様


逃げる?この私が?


“死にに行くつもりはない。戦いに行くのよ!”



そうだ、私は戦いに行くのだ。死ににいくつもりはないし死ぬつもりもない。



『…戦いに行くって言ったからには絶対に逃げたくないっ!』


「上等だよ、姫さん」


「うむ!」




三人は居間に移動し、佐助の淹れたお茶を少し口に含む。この緊張感だけは未だに慣れない。



「如月家が納めてる村で人拐いが頻繁に起きてるみたいで、それも10才から16才までの子が狙われてるみたい。」


『人拐いが…それは何と言う村ですか?もしかしたら…“野の死身村[ノノシミムラ]”では?』


「うん、その村だよ。」


「鈴花様は何か知っているのですか?」


『幼い時、数回行ったことがあるんです。野の死身村に…元々野の死身村のある場所は処刑すらされない悪人や罪人が縛られ永遠に放置されるだから、“野の死身”と名付けられたって紗知が教えてくれたんです』



野に捨てられ死を待つ身で“野の死身”と付けられた。酷い話だねーと猿飛様が言う。


『そこを村にしたのは昌次の母親だと聞きました。つまり、私の叔母に当たる人物。それについてはあまり深く話してはくれなかったのですが…「野の死身村には決して一人で行ってはいけない。必ず忍を連れて行きなさい」と昌次だけではなくみんなが口を揃え言っていました。』


「一人で行ってはいけないか…何か理由があるのでござろうか?それに忍をと言うのも気になる」


『でも、口煩く言われたのは16才までです。』


「……16まで?」


『はい。16才を過ぎてからは何も言われなくなりましたし何度か一人で野の死身村に行った記憶があります。昌次も何も言いませんでした』


うーんと考え込む佐助。



「野の死身村に何かあるのは間違いないね。姫さん、野の死身村に何か伝説とか噂とかないの?本当にどんな些細なことでもいいから」


『伝説、噂と言われましても…あっ!』


「何かあるのでござるか!?」



身を乗りだし私の顔をじぃーっと見てくる真田様に戸惑いながらも記憶を辿る。期待の眼差しが私の緊張を更に限界まで追い込む


『…亡くなった侍女が話していたのですが、昌次は戦が始まる前と終わった後には必ず野の死身村に顔を出していたそうなんです。』


「それのどこが可笑しいの?」


『可笑しいのは…昌次が城に戻ってくる度に野の死身村に火事に起きていたんです。私は幼かったからあまり気にはしていなかったのですが、その侍女が言うには焼け跡からは必ず子供の死体が出てきていたらしく…』


「繋がったね。恐らく、何らかの理由で子供だけを拐い用済みになった子供達は家事と見せかけて焼きは殺される。ただ、何の為にそんな事を繰り返しているのかは謎だけどねー」


『…………“不死の体”と“無限の力”』


「鈴花様?」





―――――不死の体を必ず手に入れて見せよう。そして永遠に主らを見守ろう。

―――――鈴花もずっとちちさまといる!ずっとずっーといっしょだね!

―――――ああ、ずっとずっと…一緒じゃ。




「姫さん、不死の体って何!?」


「鈴花様!?」




―――――御華との繋がりは途絶えたりはせぬ。必ず不死の体を鈴花の為に見つけよう

―――――見つかったら、ははさまにも会える?

―――――ああ、会えるとも。

―――――鈴花ね、ははさまにお話たくさんあるの!まずはちちさまのことにおよねのことでしょ…あとはさちたちのことも話すの!

―――――きっと、御華も喜ぶであろう。

―――――鈴花、ははさまもちちさまもだいすき!





『…私のせいだ』


「鈴花様?」


『私が母様に会いたいなんて言ったから…昌次は不死の体を手に入れて無限の力を使って母様を生き返らせるつもりなんだわ!天下なんかじゃないっ…昌次は最初から私の願いの為にっ』


「ゆっくりでいいのでちゃんと説明してくだされ鈴花様」


『……不死の体を手に入れれば永遠に生きられる。無限の力を入れれば母様とまた会える。だからきっと、昌次は魂との共鳴から母様の魂を黄泉から呼び寄せる気だわ!』


「黄泉から魂を呼び寄せるって無理だよそんなの…死者は生き返ったりしない!」


『生き返るっ…生き返るのよ!!私と人柱さえ居れば死者の魂は………何度だって生き返ってしまうの…』



そう…私は殺してもらえない。人柱になった子達は意味もなく殺されていく。意味もなく死ななければならない。








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