國崎出雲の事情(中編完結)
□私と愉快な仲間1
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「ちい!またお前か!親が親なら子も子だな!」
小さい時から肩身の狭い思いをしながら育ってきた。私の父は母と私を捨てどこかに行ってしまった。
母は私を残し首を吊り自殺してしまった
私は親戚中を点々としながら何とか生き長らえている。
「何でお前も死ななかったんだ」
分かってるそんな事…言われなくても分かってる。私だって思った。何で私も連れてってくれなかったのかって…。
けど、今更そんな事を言っても父も母も帰ってきてはくれないのだ。
息が苦しく、死んだ方がマシな毎日に私はサヨナラをしたい。
『…………今までお世話になりました』
「ふんっ、ささっと出てっとくれ!」
バタンと強く閉められたドアにため息が出る。今日から私は一人暮らしをするのだ。高校生になった今、アルバイトが出来る。学校に行かずに働けば何とかギリギリ暮らせる。
これ以上は親戚中に迷惑はかけられないし。私自身も自由になりたい。
『……今日から私は自由なんだ』
自由と言う言葉に少しニヤケてしまう。
挨拶周りが終わりさっそくアパートに帰る。雨漏りもするし冬は寒いボロくてとてもじゃないが友達や知り合いなど呼べる部屋ではない。
けど、大家さんは良い人だ。夕飯を作ってご馳走してくれたり何かと知恵を教えてくれる。
数少ないアパートの住人、私を入れて三人しか住んでない。寧ろこんなボロアパートに三人も住んでいるのは奇跡だ。
それでも、今までで一番安心できる私の居場所なのだ。
「…あら、ちいちゃん」
『大家さん、こんにちわ』
「挨拶周り終わったの?」
『はい、一通り回ってきました。今からバイト行ってきます』
「はいはい、いってらっしゃい」
庭を掃除していた大家さんには全ての事情を話した。辛かったねと言って優しく抱き締めてくれた。
『いらっしゃいませー』
バイト先ではみんな良い人ばっかりで安心した。掛け持ちをしている。コンビニとメイドカフェ。
なかなかの朝と昼間のギャップに自分でもナイスだと思う。まるで、主婦とキャバ嬢みたいなノリだ。
『あ、八雲さん。』
「ん?ちいちゃん!今日も可愛いねー」
『またまた…そないなお世辞言っても何も出ませんからね?今日もご来店有り難う御座いました』
「また明日も来るからねー」
よくウチのコンビニに買い物に来る國崎八雲さん。歌舞伎をしてる人らしくて私と同じ歳の一人息子が居るらしい。
八雲さんは本当に明るくて優しくて、凄く面白い方で来る度に息子の話をしてくれる。
『………………いいな』
私も…私の両親も生きていたらあんな風に笑えてるかな?ダメだダメだ!こんな暗い事ばっかり考えていたら!
『……………よしっ!!』
バイト終わるまで頑張らなきゃな!弱音なんか吐いてる暇があるなら仕事に専念する。
その頃、國崎屋ではニヤニヤしてながらスキップしている八雲が目撃されていた
「あの、秋彦さん」
「ん?ああ、アレ?」
「はい…師匠が出雲以外の事でスキップするってないので」
「俺達にもよく分かんないんだけど、行きつけのコンビニで毎日礼儀正しく挨拶してくれる子が居るらしくて、コンビニから帰ってくる度に最近はあんな感じだよ」
「そうなんですか」
師匠をあそこまで上機嫌にさせる子なんてちょっと興味あるなぁ。今度、出雲でも誘って行ってみようかな?
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