國崎出雲の事情(中編完結)
□私と愉快な仲間2
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目を開けたら見慣れない天井と見慣れない人達が居た。
『……………だれ?』
「ん?お、起きたぞ!」
黒髪で眼鏡をかけた男の人と金髪に近い色をして少しガラの悪い男の人が居た。
「気分はどう?今、おじさん呼んでくるからね」
『……………おじさん?』
「八雲さんの事だよ」
安心させてくれるみたいに優しく笑ってくれた黒髪の男の人。ぐるっと部屋の中を見渡すと歌舞伎に関係する物ばかり置いてある。
「じゃあ、まだ休んでなね?」
『…………待って、下さい……』
部屋から出て行こうとする黒髪の男の人のクィッと着物の袖を引っ張ると凄く驚いた顔をしている。迷惑だとは分かっているけど、今知らない部屋に一人にされるのは心細い。
「ど、どうしたの?」
『その…八雲さんが来るまででええねんけど……少しだけ付いててもらえませんか?うち、こんな広い部屋初めてやから一人っちゅーんは心細くて……ほんまに少しだけでええの……あかんかな?』
「え、いや、」
『………迷惑、でしたよね…いきなり変な事言ってしもうて…私の事はええですから……八雲さんが来るまで大人しくしてます…』
誰かを困らせたい訳じゃないから、我が儘は言わない。大丈夫。突き放されるのも嫌われるのも我慢するのも慣れてる。
「落ち着くまで居てあげるよ。あ、大丈夫!稽古は休憩中だし今はやることないから」
『………ほんまに大丈夫ですか?』
「うん、はい手」
『……おおきに…あの、名前は?』
「秋彦って言うんだ」
秋彦さんと呼ぶことにした。八雲さんがこちらに着くのは夜になるらしく今日はお泊まりする事になった。
秋彦さんから電話を借り大家さんに事情を話して今日は帰らない事を告げたら凄く心配してくれた。
『秋彦さん、有り難うございました』
「いや、俺は隣に居て話してただけだから。それよりご両親とかは平気なの?」
『あ、両親居ないから大丈夫です』
「…………………ごめん」
ダメだ。秋彦さんみたいな優しい人にこんな顔をさせちゃダメ!
『大丈夫です。もう気にしてませんから、だから…そないな顔せいんといて下さい』
ふんわり笑えば秋彦さんは安心した様に笑い返してくれた。これでいいんだ。大丈夫、感情を隠すのは慣れてるから。
「ちいちゃああぁあぁん!」
『八雲さん!』 「おじさん!?」
ドカッとドアを蹴破り入ってきたのは八雲さんだった。その後ろに出雲くんと秋彦さんと一緒にいたもう一人の男の人が居た
「大丈夫かい!?具合は!?痛いとこある!?」
『大丈夫です。いきなり電話なんかしてしまってすいません…稽古中だったんですよね?』
「稽古よりちいちゃんだ!もう平気?まだ寝てなきゃ……」
「心配しすぎだぜ親父」
オロオロし始めた八雲さんに蹴りを入れて落ち着くように言い聞かせている出雲くん
『皆さんにも迷惑をかけてしまって…本当にすいません。秋彦さんのお陰で大分良くなりました。有り難うございます』
「俺は何もしてないよ。ただ隣に居て話してただけだから」
秋彦さんって本当に優しい。クルッと横を見ればハンカチを噛みながら泣いている八雲さん…泣いている!?
『へ?あ、あの、八雲さん…?』
「いずがらあぎひごとながよぐなっだんだい!?ががとどもながよがっだし!おでのちいぢゃんがぁぁあ!」
『何言ってるか分からないんですが…皇さんとも秋彦さんともそうゆう関係ではありませんから安心して下さい。はい、テッシュ』
ズビィーっとテッシュで鼻をかむ八雲さんに苦笑いをする
『………(優しいな、ここの人達は)』
こんな人達に愛され囲まれている出雲くんが凄く、凄く羨ましい。
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