國崎出雲の事情(中編完結)
□私と愉快な仲間3
1ページ/5ページ
『記念パーティーですか?』
「うん、今から準備するんだけど料理とか任して平気かな?」
『任せといて下さい。私が作った料理が皆さんのお口に合うか分かりませんが精一杯頑張りますから!』
パーティーか。どんな料理作ろうかな…あ、材料の買い出しに行かなきゃ!
『楽しみだな、パーティー』
料理には自信があるし、今月はちょっと余裕があるから奮発しちゃおう!
「ただいまー!」
『出雲くんお帰り…て子供?』
「秀一郎って言うんだ!」
『……まさか、隠し子!?』
「ちげーよ!!!」
なんだ、違うらしい。にしても無表情な子だな。
『こんにちは、秀一郎くん。ゆっくりしていってね?』
目線を合わせてしゃがんでみた。間近でみるとこの子も結構綺麗な顔立ちをしている。
「……お姉さん誰?この間来たときは居なかったよね」
『私はちい。今は色々事情があってここでお世話になってるの。』
「ふーん。僕、喉渇いちゃった」
『オレンジジュースならあるよ?飲む?』
「頂く」
無表情だけど凄く可愛い。手を差し出せば素直に握ってくれる。小さいけど、ちゃんと温かい。
「……おい、チビ…あいつさっきと態度ちがくねーか?」コソッ
「……何かちいに懐いてるな」コソッ
と言う訳で、みんなで稽古場に集まって今回出雲くんと梅樹くんが演じる“四谷怪談”の練習をするらしい。
『飲み物持って来ましたよ。はい、秀一郎くん。』
「有り難う、ちい」
『どういたしまして』
笑ってはくれないけど、ちゃんとお礼も出来るし。何だかんだいっていい子だな秀一郎くんって…あれ?出雲くんと梅樹くんが居ない…?
『玄衛くん…出雲くんと梅樹くんは?』
「ちょっとねー」
『ん?』
「はい、こっちこっち」
グイグイと一枚の扉の前に連れてこられた。何だろう?てゆか、玄衛くん凄く楽しそう。
『玄衛くん…一体……』
バンッと扉が回ったと思ったら出雲くんが出てきた。その前をちょうど八雲さんがお菓子を持って通りかかった…これはマズいパターンだなぁ…
『元気出して出雲くん…さっきの出雲くん綺麗だったよ?』
「褒めてんのか貶してんのか!」
頭を抱える出雲くんに近付く秀一郎くん。
「さっきのつまんないのが歌舞伎?やる気あんの?」
『……秀一郎くんっ!』
「おい、てめー!」
梅樹くんが秀一郎くんの襟を掴むと、出雲くんは出雲くんなりに頑張っているんだってことを秀一郎くんに言い聞かせてい…あれ?お金で解決されちゃってるよ
次に、玄衛くんが挑戦しているがやはりお金で解決されてしまっている。どうして…どうしてそんな風にしか出来ないのかな?
『…秀一郎くん…ダメやろそないな事したら!確かに金を貢がれて解決される方もいかんけど…何でも金で吊れば言い訳じゃないんよ…?そないな事ばっかしてたらいつか独りになってまうんやで…』
「だって、父さんはいつもぼくにそうするから。」
つまらないから帰ると言ってタクシーで帰って行く秀一郎くんの後ろ姿は寂しそうだった。
「ったく、想像以上にマセガキだったぜ。」
「あんなコ怖がらせられるかな〜?」
『………………ちがう……』
「ちい?」
『秀一郎くんは楽しいことが見つからないんだよ。欲しい物は手に届く場所にあるし必要な物はすぐに手には入る。お金だって欲しければ欲しいだけ与えられるけど…それだけじゃ足りないんだよ。一緒に遊んで、笑って、バカやってくれる友達が居なきゃ誰だってつまんないでしょう?』
いくらお金や物に恵まれてても話をする人や遊んでくれる友達が居なきゃ何をしても楽しくなんかない。
秀一郎くんに足りないのは、友達と自分をさらけ出す勇気だ。
『秀一郎くんは凄く寂しいけど、それをどう表現すればいいのか分からないんだよ…多分、教えてくれる人が居なかったんだよ。優しさとか人を愛する気持ちとか楽しい事とかって周りの人から教わるでしょう?秀一郎くんにはその“教えてくれる人”が誰も居なかったんだよ…』
「………ちい」
少しだけ気持ちが分かるんだ。一人じゃつまんない、一人じゃ寂しいって気持ちが…だからどうにかしてあげたい。
『みんな、私に良い案があるの!』
今回のパーティー…記念パーティーじゃなくて接待パーティーにしてやる!秀一郎くんのお父さんも呼んでね。
『……このパーティーは全て私が仕切ります!』
その日の夜、ちいは徹夜でパーティーの事を考えていた。
、